冒頭のアトリエの描写から、音のない空間と、そこに残された不在の気配が強く伝わってきました。
ココがいないことが、ただの事実ではなく、空気や光の質まで変えてしまっているのが印象的です。
過去の思い出はどれも静かで、やさしく、だからこそ後悔の輪郭もはっきりと浮かび上がります。
絵を描くことができなくなった理由が、言葉で説明されすぎず、行動や感覚の描写で伝えられている点に、強い説得力を感じました。
「ここにいた」という言葉が、喪失の否定ではなく、共に過ごした時間を確かに肯定する響きを持っていました。
悲しみの物語でありながら、読み終えたあとには、「確かな、あたたかい温度」が胸に残る一編です。