8
クリスマス当日。
終業式を終えたら、家に帰って宝人くんたちをお出迎えする予定になっている。
一人で廊下を歩いていると「山田さん」と呼び止める声が聞こえた。振り返れば、宝人くんのお友達の人たち。
阿部くんと宝人くんの姿はなく、みんなニヤニヤと意味深に笑っている。
された相手は不快に感じるやつ。
私にとっては蔑むその感じはご褒美だけどね! ……もっとくれ。
「今日はクリスマスだね。宝人と過ごすんでしょ?」
「はい!」
いいね、いいね、その視線。
バカにしてるのが透けて見える。
「うまくいってるんだね」
「そう見えますか~」
興奮しすぎて頬が緩んじゃう。
そんな私の様子を鼻で笑われたけど、だからご褒美なんだって。
「もし、宝人が君に隠してあることがあったらどうする?」と突拍子もなく問われる。
これは私を試しているってことね。
「それでも、宝人くんとずっと一緒にいます!」
声高らかに私は宣言をした。
目の前の男子たちは呆気に取られている。中には可哀想な目を向けてくる人までいた。
「あっ」と誰かが言った。
その視線を辿って振り向くと、涙目になった男の子がいた。
「……山田さん」
宝人くんは顔を歪ませていた。
「君がそこまで思ってくれていたなんて……俺は……」
今にも零れそうな涙を耐え、唇を噛んでいる。
その様子を茶化すことが出来る人間などおらず、固唾を呑んで見守るしかなくなっていた。
「……もう逃げるのはやめる」
宝人くんは袖で涙を拭い、仲間たちのほうを見てから私の名前を呼んだ。
「山田涼子さん」
「……はい」
「俺、ちゃんと責任取るから。君を傷付けたりしない」
真摯な眼差しに、思わず胸の奥に衝撃が走った。
銃で撃たれたような気分。
「ええええ!?」と周りが叫ぶ。
「ちょっと、宝人!?」「話が違う…、」「そこまでしろなんて」などと、ごちゃごちゃ言い始めてるけど、知ったことか!
宝人くんがこう言ってくれてるんだから黙っとけ!
私は笑顔を作り、お友達に告げる。
「皆さんも、末永く私たちのことを見守ってくださいね」
感謝の気持が溢れてしまう。
私の様子にみんな口を閉じた。いい子。
宝人くんに罰ゲームを提案してくれてありがとう。
――このゲームで私の幸せは勝ち確した。
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