喫茶店での怒号、そしてバランス

やさい

喫茶店での怒号、そしてバランス

船橋にある「よしの」という、席で喫煙可能な小さめの喫茶店に入った。言わずもがな、席でタバコが吸えるのを魅力に感じたからである。

席に座り、コーヒーを注文する。タバコを取り出し、ライターで火をつけた。


途中でおじさん客が入ってきて、席に座るなり、隣の席のおばあさんのタバコの煙に文句を言い始めた。

「ちょっと、タバコの煙邪魔だよ!」

すると店員のおじさんが厨房からすっ飛んできた。仲裁をするのかと思って見ていると、

「お客さん帰ってくれ!ここはタバコが吸える店なんだから、喫煙者に文句を言うのはおかしい!」

と、かなり大きめの声で強く伝えた。狭い店内にいる全ての客が静まり返る。

おじさん客はゴニョゴニョと何かを言っていたが、結局そのまま出口へ向かって足早に歩いて行った。店を出た後、外から中に向かって何かを言っていた。

おばあさんに目を向けると、店員のおじさんが「おかしいよねえ、店に入ればわかるはずなのにね」とフォローをしていた。おばあさんは特に気にしていない風だった。


実は私も店に入った時に、自分の隣の客のセブンスターの煙が気になっていた。服が臭くなるなあとか考えていた。もし私が恥も外聞も持たない人間だったら、隣の客に言ってしまっていたかもしれないな、と思った。でも言わなかったのは、店員のおじさんが言う通り、この店が喫煙可能店だからだ。

ギリギリのライン上で私たちは生きている。


その客と入れ替わりに若い女の子が入ってきて、私の隣の席に座った。多分カフェ巡りが趣味の人で、タバコは吸わなそうだ。私が知らないだけで、もしかしたらパフェとかクリームソーダとかが有名なお店なのかな。

なんとなく私はタバコを吸うことを控えた。

ラインの上で、バランスが取れる人間でありたい、と思った。

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喫茶店での怒号、そしてバランス やさい @zawa-831

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