神操り師のシュン

カツ丼

第1話 【落下して来たカラス】



誰かが頭をやさしく撫でてくる


「シュン君…ごめんね…」


どこか懐かしくどこか悲しげな声が聞こえ、その方向を向くと、そこには、やさしい顔のお母さんが白い着物を着て、どこかへ向かう…


「待って!」と手を伸ばし、お母さんの方へ…追いかけた…追いかけ続けた…だが、距離が縮まらない…


それでもまだ…追いかけていた…


やっと手が届きそうな所だった…


剣のようなものが空から落ちて来て、お母さんの首が…


「うわぁ!?はぁ…はぁ…はぁ…ゆ…ゆめ…?」


一番後ろの窓側の席で、茶色い髪をしており、目に光がない小学五年生の 「シュン 」は、悪夢で目が覚め、冷や汗が流れていく…


「いつから…寝ていたのかな…」と窓を見たら、もうすっかり、空がオレンジ色の夕焼け空になっており、カラスが鳴いている。


「……帰ろう…」


シュンは後ろに置いてあったランドセルを背負い、教室から出た。





第1話 【落下して来たカラス】


そして、シュンは下駄箱に行き、靴を履きかえ、学校を後に家に帰ろうとした。


住宅街なのに、人の声もない、ただ聞こえてくるのは、カラスの声とシュンの足音だけだった。


(…それにしても…ずっと悪夢ばかり見て、夜が眠れてないなぁ…授業中でも寝てしまうし…もうやだな…)


そう思いながら、下を向いて、地面を見ながら歩き続ける。


 カァ!カァ!カァ!


カラスの声が騒がしくなるとともに、風が強く吹き、シュンの髪の毛がなびき、シュンは立ち止まる。


 (…びっくりした…それにしても…カラスの声がたくさん聞こえてくる…なんだろう…?)


シュンは少し疑問を持ったが、歩こうとした時だった。


 ドーン!!


一瞬だった…


夕焼け空から、黄色く白い光がシュンの目の前に落ちてきて、大きな爆発音が辺りに響き、あの騒がしかったカラスの声が聞こえなくなる。


「うわぁ!?…イタタ…か…かみなり?…どうして…?」


シュンは突然、降って来た雷に驚き、尻もちをついてしまった。


雷に打たれた場所を見ると、少し黒く焦げており,カラスの羽が何本か、燃えながらゆっくりその場所に落ちて行く…


シュンは、色々と気になるが、無視をし、あとまわしにし、帰ろうとした時だったった


 バタン!


シュンの後ろから、何かが落ちる音が聞こえてきた。


シュンが振り向くと、そこにいたのは…黒い翼とカラスの足、そして、左手の代わりに黄金の鉤爪を持つ、学生服を着た女性がボロボロに倒れていた。


裂けた翼は焦げ、羽根は抜け落ち、帽子は歪み、額から赤黒い血が伝わっていた。


「だ…だいじょうぶですか…?」


シュンはその翼を持つ女性に近づこうとした時、翼を持つ女性が、シュンの両手をつかんだ。


「君ごめんね…!少し預かってもらうよ!」


翼を持つ女性が、笑顔で首を後ろに曲げた。


「えっ?」


ゴツン!


そして、翼を持つ女性は、シュンの額めがけて頭突きした!


「うっ!?…痛いたた…」


シュンは額を押さえながら、よろめき、また尻もちをついてしまった。


「ふぅ…これで…いったん……あっ…」


翼を持つ女性は気絶し、また倒れた。


「イタタ…何を…?」


シュンは、怒ろうと翼を持つ女性の方を見ると、女性の体…だんだん縮むように小さくなり、二頭身の女の子の姿になってしまった…


「これ…どうしよう…」



シュンの部屋


「はぁ!?」


シュンの小さな部屋のベッドで寝ていた翼を持つ女の子は、飛び起き上がった。


少し落ち着き、女の子は自分の体を触ると傷がある所に包帯でぐるぐる巻かれていた。


周りを見ている時、ちゃぶ台の所で正座しながら、宿題をやっていた鉛筆を持っているシュンが女の子を見ている。


「だ…だい」


「カァ!カァ!少年よ!!我は無事であるぞ!誇るがいい!」


女の子は立ち、上から目線で威張りながら言う。


「あ…あの」


「そうか!名乗るのを忘れていた!我の名は  カラスのである!!」


決めポーズをしながら,自己紹介をするワルカラス


「神…ってあの…みんなが崇める神さまのこと…?」


「そうだ!人間…いや、全生物が崇め祀る!神である!!」


ワルカラスは、ドヤ顔しながら語る


「…ふーん」


 とシュンは興味なさそうな反応をし、宿題を再開した。


「えぇ!? 我神ぞ!!すごいんだぞ!!一目見られるの珍しい神だぞ!!」


ワルカラスはシュンの後ろでわーきゃわーきゃ騒いでいる。


「うるさいなぁ…宿題のじゃましないでよ…」…」


シュンはワルカラスをにらむように見る。


「ほうほう…宿題かぁーじゃあ我が一瞬でやってやろう!」


ワルカラスは、宿題を手を伸ばそうとすると、シュンは,宿題を高く持ち上げた。


「えぇ~なんで我がやれば一瞬で終わるのに~」


「嫌です…このぐらいなら、僕だってできるから…あと宿題は自分でやらないと、意味ないからね…」


シュンはそう言うと、ワルカラスは、「そっかー」と言い、少ししょぼんとする。


「…あっ!忘れてた!!」


ワルカラスは、何かを思い出し、左手の鉤爪をシュンの方へ前に出した。


「我の力を返してもらおう…」


ワルカラスは何かをやろうとしたが…


何も起こらない


「あれ…?おかしい…?」


まだ構えるワルカラス


だが何も起こらなかった


ワルカラスは腕の力が抜け、下にうつむく。


「…ワルカラス…?」


「力が戻せない…」


「えっ?」


「我の力が戻せないぃぃぃぃ!?」


 とワルカラスは、絶叫するかのように左手を押さえて驚く


「…あの…力ってなに…?」


シュンは不思議そうにワルカラスに言う


「いやな…あの頭突きの時に、我の力を君の中に入れたんだけど、戻せなくなってしまったぁ~これどうしよ~」


ワルカラスは、弱気な声で衝撃的な事実を打ち明けた


「うん???僕の中に力を入れた???」


シュンはもちろん、困惑をする。


「返せ~返せ~!我の力を返せ~!」


ワルカラスは、シュンの服を強くわしづかみにし、シュンをゆらしまくる。


「いや…僕だって…わからないよ…ていうか…なんで僕に力を入れたのか、こっちが聞きたいよ…」


シュンはまだ状況が整理できないのか、困惑したようすで答えた。


「それがのぉ~」


ワルカラスがことの経緯を話す。


 _____


我は…とあるのため


とある場所に飛んで向かう途中に


我より下級の神がいきなり、目の前に現れ、襲いかかってきたので、一瞬で片付けようとしたら…


そしたら、なぜか、を使いまくれて、


最後に、我含めて鳥系の神が苦手とする、雷の神の技「雷鳴一閃らいめいいっせん」をもろに喰らい、君の後ろに落下したんだが…


もしかしたら、追い討ちをかけられるかもしれないから、一応、消えたふりするために、君の中に力を入れたんだが…


今まさに…取り出そうとしたら…取り出せないって状況…


 ________



「…ってことだ~だから返せよ~」


ワルカラスは経緯を話し、シュンの服を引っぱるが、シュンは体を揺らして、ワルカラスの手をはなさせる。


「いや…だから…僕もわからないって…」


「そんな…」とワルカラスは、ピョコンと座り、しょぼんと悲しんだ。


 グ~~~~~


シュンの部屋におなかの音が響く


シュンはワルカラスの方を向き、じーっと見つめる


「…いや!我神ぞ!神はおなかをすかない体質だから!」


ワルカラスは、慌てたようすで弁明をする。


「ふーん…もう6時だし…なにか作って食べようかな…食べよう」


シュンは立ち上がり、扉を開け、自室から出て行く。


「…我が味を確かめてやる!少年よ!光栄に思うが良い!あと決して!おなかを空いたとかではないから!」


「結局…食べるんですね…あと僕はシュンですよ」


ワルカラスは、釣られてシュンの後ろに着いて行くことにした。


暗いリビングとキッチンに電気をつけ、シュンはキッチンで具材や調理器具を取り出し始め、ワルカラスはソファに座り、くつろいでいた。


ご飯を焼く美味しい匂いと音がする…ワルカラスはウキウキしながら、足を動かしていると、とある仏壇に目が行く。


ワルカラスは仏壇にあるを見て、目をまんまるにし、驚いた。


ワルカラスは少し考え事をする動作をした。


「うん?ワルカラスどうしたの?」


シュンは今できあがったチャーハンを持ちながら、不思議にワルカラスに問う。


「いやいや…なんでもない!それにしても!美味しそうじゃないかぁ!」


ワルカラスはよだれを垂らしながら、シュンの方へ飛んでいく。


そうして、2人は机にチャーハンを置き、食べ始めた。


「うむ!うまいじゃないか!シュンよ!誇るがいい!」


ワルカラスは、パクパクと食べ続ける。


シュンは少しだけニコッとし、満更でもないようだ。


「そういえば…?君のお父さんは?」


ワルカラスは、悪気もないようにそう言う


「お父さんは仕事が遅いから、深夜しか帰ってこないの」


少し悲しげにシュンはそう言った。


「ふーん…」とワルカラスは、興味もなさそうにそう言い、チャーハンを食べ続ける。


そうして、ワルカラスはチャーハンを食べ終わり、少し丸く膨らんだおなかをポンポンとたたく。


「シュンよ…」


「なに?」


「ひとつだけ、試したいことがある…あとで外で集合だ」


ワルカラスは、まじめにそう言い、リビングを後にした。


 (…なんだろう?)



シュンはチャーハンを食べ終わり、そして、玄関のドアを開け、外に出るとすぐそこにワルカラスが立っていた。



ワルカラスは、シュンの方を向いた。


「シュンよ!いきなりだが!目を閉じ、腕を前に出して、指に力を入れろ!」


ワルカラスは、唐突に命令してきた。


「…えっ?まぁ…やるけど…?」


少し困惑しながら、ワルカラスの言う通りに、目を閉じて、腕を前にして、指に力を入れる。


「そうそう!それで!何かを指の力を外に出すようなイメージで、指をぎゅっとしろ!」


「えっ…えっ~と…何かを外に出すイメージ…?」


シュンは少し困惑しながらも、指をぎゅっと力を入れ、ワルカラスの言う通りに想像してみた。


そして…数分が経ったが、少しも変化しなかった。


(僕…何をやってるんだろう…?)


シュンは少しだけ恥ずかしくなり、目を開けた。


「うーむ…少しわかりにくかったかぁ?そうだなぁ~?遠くのものをつかむ!と意識すれば出てくると思うぞ!」


「…これ、つきあうの最後だよ…」


シュンはそう言い、もう一回、目を閉じ、また想像をしてみた。


 (…遠くのものをつかみたい…お母さん…)


一瞬、暗闇の中にあの悪夢と同じ映像が流れ、お母さんがどこかに行くように歩いていく。


 (は…早くつかまないと…!)


シュンは手を伸ばし、どこかに行くお母さんを止めようと一生けんめい手を伸ばしていると、


「おっ出た!出た!」


ワルカラスが大声で言うので,シュンは目を開けると,シュンの指の一本一本の爪の隙間から、青く光る細い糸が生物みたいに動いている。


「何これ…?」


シュンは得体も知らないものが自分の中から出て,困惑している。


「これはじゃ!シュンの中にある神通力というか、まぁ我の力だな!それを出すためのホースみたいな感じた!」


「これをどうするの…?」


「これを我の背中に突き刺せばいいのだ!」


ワルカラスはそう言い,背中を向けた。


シュンは、よくわからないまま、神糸をなんとなく動かすように想像してみると,神糸が動き始め、ワルカラスの背中に突き刺す…すると、ワルカラスは、少し光り始める!


「な…に?」


ワルカラスの体が、あの時の姿のように、だんだん、体が大きくなり、大人の女性のような体つきになる。とても凛々しく美しい顔、黒く大きな羽を持つが,左の羽から少しだけ小さくなっていた、鋭い尖ったカラスの鉤爪と左手の黄金の鉤爪、装飾が豪華になり、とても神々しくなっていく。


「これこそ!我の真の姿!カラスの神!ワルカラスだ!」


そして、ワルカラスは、シュンの方を向いてかっこうをつけるが、いきなりの変化にシュンは驚き、呆然としていた。


「ふふっ!きれいだろ!この美貌にあふれる我が姿を!」


「…あっこれでもしかして…?力戻った?」


ワルカラスは自分自身の美貌を自慢したが、シュンはそう言い、無視をした。


「がくっ…だが、この姿にはなれたが…我の力をすべて取り戻そうとしたが…なぜか…シュンの中にへばりついていて…取れないんだよな…」


ワルカラスはシュンをじーっと見つめ、2人いっしょに首を横に傾げる。


「まあ…いっとき的なものになるがしかたないな~それにしても~今日は満月が見えるな」


ワルカラスとニヤリと笑い,急にシュンを抱きしめるようにする。


「!?」


急な抱きしめにシュンは困惑しおどろき、胸部が顔の後ろに当たって赤面する。


「さあ!夜の!飛行ショーの始まりだ!」


ワルカラスはそう言い、翼を広げ、助走をつけ、一気に飛び立つ!


一気に飛び立ってしまい、強い風圧でシュンの髪の毛が強くゆれ、目を閉じてしまう。


雲に届くまで、ワルカラスは高く高く風を貫いて、飛んでいく。


「…うん…わあ~…」


シュンは下を見ると,そこには、だんだん小さくなる住宅街に見ほれてしまう。


シュンはだんだん、慣れていき,風圧が心地よくなり、空気がきれいなことを知る。


そして、雲を貫いた時、シュンは少し凍えたが、それも心地よくなり、久しぶりに楽しい感情になった。


そして高く飛んでいくと、満月がよく見える場所まで高く飛ぶと、


「よーし今から落ちるぞ!321!」


と急にワルカラスはカウントとし、シュンをはなした。


当然のこと、シュンはとてつもない速度で下へ落ちていく


「わぁわぁわぁ!?」


シュンは仰向けで顔が真っ青になりながら,ジタバタしていると、


ワルカラスは、シュンよりも早く下に行き、

タイミングをつけ,横から移動して、見事にキャッチする。


「これが…今で言う!ハラハラドキドキ感だ!どうだったかぁ!」


「…ハラハラドキドキというか…これ…ただの恐怖だよ…これ」


シュンは白目になりながら,ガクッとしているところを見て、ワルカラス ニシシッと笑う。


そうして、ワルカラスはゆっくりと降下し、玄関前にゆっくりとシュンを置いた。


「見たか!我の飛びっぷりを!体験できるのは稀だぞぉ~」


ワルカラスはドヤ顔をしながら、シュンのほっぺをツンツンと触る。


「…落とすことがなければよかったのに…」


「いい顔しとったなぁ~」


ワルカラスはニヤニヤと笑っている。


「…でもありがとうございます…楽しかったです」


シュンは感謝を込めてお辞儀をした。


ワルカラスは少し、シュンの行動に目をまんまるにし、驚いてしまった。


「でも、落としたことは許さないから」

とシュンはワルカラスを小さくにらんだ。


それを見たワルカラスは、シュンの頭にわしゃわしゃと撫でまくる。


「じゃあ!次は!空中回転してやろうではないかぁ!」


ワルカラスは、意地悪な顔をした。


「もうやめてよ…」

とシュンは満更でもないようすでワルカラスの手を退けようとしたその時だった。


シュンの神糸が徐々に指の中に戻ってしまい,ワルカラスの姿がだんだん小さくなり,小さい姿になってしまった。


「ありゃ…ここまで見たいだけだなぁ~」


ワルカラスは少し残念そうにした。


「そう…なのか…あれ眠たい…」


シュンは急な眠気に襲われて、クラクラとよろめく


「よいしょっと…我の力入っているが、本来は、神糸は、シュンの神通力も出すものなんだよなぁ…我の力と一緒に出てしまって疲れてしまったんだな」


ワルカラスは小さな体で、シュンの脇につかんで、少しだけ浮遊するようにし、そしてなんとかして、シュンの部屋のベッドに運んだ。


「おやすみ…」


シュンは目を閉じて眠り,ワルカラスはシュンの部屋の電気を消した。



ワルカラスは、小窓から外に出て、家の屋根に座り、満月と星空をさびしそうに見上げだ


「…これも運命なのか…」


ぼそっとワルカラスはつぶやく…



そして、ワルカラスは見飽きたのか、リビングにある仏壇所に行き,置いていた写真たてを手に取った。


その写真には,青髪で小さな眼鏡をかけ、赤ちゃんを抱いている女性の写真が写っていた。


ワルカラスは、ため息を吐いた。


終わり





5日前


「おなかが空いた…」


服がボロボロに破け,やせ細り、火傷跡がひどい女の子がとある電柱で、おなかをおさえている。


「どうしたの?」


とパンやお菓子がいっぱい詰め込まれたエコバッグを持った


「何か…食べ物…」


と女の子が言うと,シュンは、当たり前のようにエコバッグから、大量のパンやお菓子を取り出して、その子の目の前に渡す。


「えっ?いいの…?」


女の子が困惑している


「うん…いいよ…じゃあね」


そう言い残し,シュンは家に帰って行く…


「ありがとう…ありがとう…こんなの初めて…いつか…お礼をさせて…」


女の子はかんどうし、涙を流しながら,パクパクとパンとお菓子を食べる。


シュンはふと後ろを振り向くと、女の子はいなくなった。


「帰ったのかな?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

神操り師のシュン カツ丼 @kavo8275758

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画