欺瞞

  欺瞞


ある晩 わたくしの倅がひそかに わたくしにたづねた。

ひとはなぜ なんのために この世にあるのか?と。


わたくしはひそかに 倅にこたへた。

ひとは ひとがなぜこの世にあるのかをかんがへるために

 この世にあるのだ、と。

すでに先達によって用意されてゐた

 最もたくみなこたへのひとつを。


外は師走も末ちかい 凍てつくやうな宵だった。

晴れわたる夜空には 冬の星々が

 自明の位置に 自明のごとく輝いてゐるはずだった。

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