第5話 まるでお姫様のような

「ふわーぁ……」


 トルテは目を覚まし、

 テントの外から明るい日差しが入ってきて、日が昇っているのを感じさせる。


「あれ!セリナ?」

 

 隣にセリナがいないことに気づき、慌ててテントを飛び出した。


「あら、もう起きたのね」


 セリナは朝早く起床し、森でりんごを集めて、起こした焚き火を見つめながらりんごを焼いていた。


「はぁ……びっくりした!よかった」


「?」


 セリナは突然の言葉に戸惑い、きょとんとした顔をしながら、りんごの焼き加減を見定めていた。


 しばらくして……。


 二人は朝ご飯を食べ終え、次の街へと進んでいた。

 トルテは歩きながら、目の前に出てくる木を避けながら地図をみて、こんなことを呟く。


「あれー?ここらへんのはずなのに」


 どれだけ長く歩いても森林から抜けられず、2人は頭を抱えていた。


「おかしいわね……地図通りのはずなのに」


 セリナは少し考え込み、顎に手を当てながら小さく呟いた。


「この森……何か妙ね」


 ふとセリナは鋭い感覚でなんとなくだが何かを感じ取った。

 

 歩いていると森の中に、小さなベンチに座って上の空でいる少女が目にはいった。

 まるでお姫様のような、桃色のツインテールの少女だった。


https://kakuyomu.jp/users/daikonz/news/822139842155697277


「あれ?あそこに人が座ってる……街はどこか聞いてみようよ!」


 トルテはとっさにひらめき、笑顔で声をかけた。


「ごめんなさい!この近くの街ってどこか知りませんか?」


 話しかけると、少女はぼんやりした様子からにっこりしながら答えた。トルテは、その笑顔はどこか不思議と不安になるような気がした。


「街?このまま森を抜けて、あともう少しのとこにあるよ!大きな街だから、すぐわかると思うよ」


「そうなんだ!やっぱり間違ってなかったみたい!」


 二人は目を合わせ、安堵し得意げな顔をした。


 その時、お姫様のような少女はゆるやかな口調で、二度聞きたくなるような言葉を発した。


「でもここからは抜けられないかな〜?」


「えっ!?どうして?」


 トルテはびっくりしてとっさに声が出た。


「わたしが魔法でこの森から出られないようにしてるの!」


 トルテは少女から驚きの事実を知り、あんぐりにして少し固まった。その後、


「どうしてそんなことするの?俺達はなにもいいもの持ってないよ」


 トルテはどうしてそんなことするのかと、とても疑問に思い、


「うーん……一緒に遊んでほしいからかな!」


「遊ぶって、戦うってこと?」


「ううん、さみしいから一緒にいてほしいの!」


「私友達がいないから、一緒に遊んでてほしいの!」

  

 トルテの彼女を見た最初の印象はお姫様のような少女だった。だが、喋ってみることで彼女を知り、次の彼女の印象は笑顔の裏に隠れた純粋な闇に気づき、胸がざわついた。


「ねえねえどうするの?遊ぶ気になった〜?」


 少女は黙り込むトルテにおちょくるように声をかける。トルテは考えこみ、その後ようやく


「いいよ!だって俺も友達欲しいから!」


 トルテはいつものような、太陽のような快活な笑顔。木の枝から小鳥がパタパタと羽ばたいた。


「えっ?いいの?どうして……」


 少女のいままでのようなからかう素振りから一転し、驚いたのか目を丸くしながら問いを投げかけた。


「言ったでしょ!俺も友達欲しいから!」


「とも……だち?」


「そう!友達!俺はそれのために旅をしてるんだ!」


 トルテとっては普通の、でも少女にとっては不思議な衝撃の答えに少女はきょとんとしながら沈黙した。


「変な人……」


 少女は思考停止の後、真っ先にその言葉が浮かんだ。でも、どこか嫌な気はしなかった。

 自分もずっと昔から友達が欲しかったことの想像し、言葉を紡いだ。


「面白そう!私も冒険に連れて行って!」


 少女は優しいトルテの発する言葉や内面にすごく興味を持ち、自分もつれていって!とベンチから飛び起り、声をかけた。


「もちろん!俺はトルテ!君は?」


「私はユルル!友達になってくれてありがとう!」


 トルテは少女の希望を持った、キラキラとしたさっきとは違う星の光のような雰囲気を感じながら、もちろんと喜んでと返事をした。


 そのころ、セリナは――


「またこのパターンね……」


 同じような展開にデジャブを感じ、本当に大丈夫なのかしらと目を逸らしながら呆れた様子だった。

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