第4話 キャンプ
セリナと友達になり、一緒に旅に出ることになった二人は次の街へと歩き始めていた。
セリナのいた街を抜け、木が生い茂り川が緩やかに流れ、小鳥がさえずっているような穏やかな森林を歩いていた。
「そういえば、さっきは一瞬見えなくなってすごくびっくりしたよ!どうやったの?」
トルテはセリナと会い、とても不思議に思った、一瞬だが時が止まったように感じたあの出来事を聞いてみた。
「……あれは不可視っていう私の能力よ」
セリナは少し沈黙して、目をつぶりゆっくり喋った。
「不可視?」
「生まれたときからできた能力よ。見えなくなれるの。無敵ではないわ、攻撃が当たったら無意味よ」
「すごいね!」
トルテははじめて自分と親以外に能力を使える人間を見て、すごく嬉しくなってしまった。
トルテは少し疑問に思った。まだ会ってあまりたたない相手に、こんなにあっさりと自分の能力を打ちあけてしまってもいいのかと。
「自分から言ったのもなんだけど……どうして能力を教えてくれたの?」
「あら?さっき友達って言ってたのは嘘だったのかしら?」
セリナはこちらを向きながら、眉をアーチ状にしていたずらっぽく、ニコッと笑顔で答えた。
「そっか!全然!」
トルテはセリナの見せた意外な表情と言葉に、いつものように明るい満面の笑みで言葉を返した。
セリナは前を向き、少し目を閉じながら不可視に関しての過去の思い出を振り返っていた。
その時、
ぐ、ぐぐー(お腹が鳴る音)
「……。」
「ごめん!ごめん!お腹空いちゃったみたい」
「ならそろそろここで野宿でもしましょうか」
ちょうどよいところに、座れそうな切り株を見つけたので、まずそこを野宿の場所にすることにした。
トルテは焚き火に使えそうな木の枝と川の近くで囲む石を探し、セリナは殺し屋ということで、食べれそうな動物を探す狩りに出ていた。
「あっ!セリナ見つかった?」
「ええ、そこそこね。あなたは?」
まず、トルテは小さな切り株ぐらいの円状に1mぐらいの石を積み、その中に細い枝を数本、葉っぱなどをおきマッチで火をつけた。
火がついたら仰ぎながら、だんだん細い枝から太い枝を突っ込んでいく。だんだん火が大きくなってきたら、
そこにさっきセリナが狩った、鶏をさばき、トルテが持ってきた調味料で下味をつけ、調味料を合わせて照り焼きソースっぽくしたものを、さばいた鶏に塗り、細長い枝に突き刺して、手に持ち焦げないあたり少し離した火のそばでしばらく焼く。
10分後……
「おいしそー!いただきまーす!」
トルテは真っ先に鶏肉に齧りついた。肉汁が口の中で溢れ、照り焼きの香ばしい匂いを鼻で最初に感じ、次に鶏肉の脂がのっていて柔らかい、肉の味を口いっぱいに頬張った。
しばらく立ち……
「お腹いっぱいー!もう食べれないよ」
「ええ……そうね」
2人はお腹いっぱいになり、もう当分肉はいいかな?と苦しさを感じながら話し合った。
空が静かに藍色に染まり始め、だんだん辺りが暗くなってきた。
「そろそろ寝る時間ね」
「あっ!テントなら僕持ってきたよ!寝袋は2つないけど……」
「私も持ってきてるわよ……」
トルテはうっかり間違いを指摘され、てへへと頬をかき目をニコッとさせながら戸惑った。
二人はそこそこ広さのあるテントに横たわり、ふとトルテは思い出したことを言葉で紡いだ。
「そういえば、何で村に人がいなかったのを、自分のせいだと思ったの?」
「……。」
「あー!ごめん……嫌だったよね」
トルテは自分の失態に気づき、内心へこみながら手をわたわたさせながら焦って謝った。
「いいわよ。あれは昔から本当に私のせいだから……」
「どうして?」
「不可視が使えると伝えたと思うわ。そのせいで昔から変な子、犯罪者呼ばわりされてきたの。殺し屋を始めたのはそう呼ばれた後よ」
「そうなんだ……大変だったんだね……」
トルテは驚き、自分が嬉しく歓喜した、不可視の能力がまったく反対の嫌悪のリアクションを聞いてとても切なく思った。
それと目を細め微笑み話すセリナの表情が、心苦しそうに見えて、余計に胸がキュッとなった。
「そういえば……あなたは何か能力は持ってるの?」
セリナは話題を変え、こちらのほうに目を向けながらトルテに質問した。
「俺は波動が使えるよ!あと、体術も得意なんだ!」
トルテは自分の能力に誇りを持っており、その能力を紹介するチャンスだと、自信たっぷりに答えた。
「波動と体術ね……格闘系って感じかしら?」
「うん!親から教わってきたんだ!」
「他にも私みたいに能力を使える人間っていたのね」
トルテは能力を持っている人間をみた、自分と同じことを思っていたセリナを見て、こう声かけた
「やっぱり能力ってみんなが使えることじゃないから、セリナの能力だってきっとすごいことなんだよ!」
トルテはきっと、セリナの能力は人が蔑まれるような、嫌悪される能力ではないと伝えたかった。
「ええ、そうね」
セリナはふふふ、とトルテの温かな優しいに言葉に静かに喜んで笑った。
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