第2話/3日目からだが

第三話:侵蝕の街路(語る者はウイルスをも笑わせる)


朝。都市の鼓動が耳に刺さる。

地下鉄の低音が心臓にジャブを打ち、俺の目覚めを強制する。

枕元にはナナのメモ。


「今日は一人で歩け。都市が君を試す」


──試験か。合格点は何点だ?

赤点なら、再試験はあるのか?

そもそも、俺は何の科目で落第したんだ?


外に出ると、ビルの壁がざわついている。

広告が俺をストーカーし、目が合うたびにこう言う。


「お前は誰だ?」


俺は答える。


「ハイリオだよ。語る者だ。あと、たまに滑る者だ」


アスファルトが波打ち、都市が俺を“認識”した。

歓迎じゃない。これは都市の免疫反応。

つまり俺は、都市にとっての花粉。くしゃみされる側。


現れたのは、人の形をした“過去”。

顔は液晶。俺の黒歴史が自動再生されている。


「#死にたい」

「#誰か気づいて」

「#ポエムは夜に限る」


──やめてくれ、俺の中の中学生が泣いてる。

ナナの声が脳内に響く。


「語れ、ハイリオ。恥を、痛みを、あとその微妙な自撮りも」


俺は語る。

恥を、痛みを、あと“誤爆したLINE”まで。

語るたびに、液晶の顔がノイズを走らせ、ひび割れていく。


「これが……俺のスタンド、“トラウマ・リサイタル”だッ!」


都市の空が割れ、光が差し込む。

ナナが言った。


「合格。都市は、君を“存在”として認めた」


──合格。

それは通知表の裏に書かれた「よくできました」。

でも俺は知ってる。

この都市、追試が本番だ。


---


エピローグ:ログインとバグと、そしてジョーク


語る者は都市に抗える。

語らぬ者は都市に飲まれる。

語りすぎる者は、だいたい炎上する。


俺は語る。

恥も、痛みも、未送信の「好きでした」も、全部ネタにしてやる。

ナナはデレない。だが、デレないことが彼女のデレだと誰かが言っていた。

──誰かは俺だ。俺が言った。俺が俺を騙してる。


都市は再起動を繰り返す。

バグも仕様。アップデートも事故。

人生と同じだ。パッチノートはいつも後出し。


俺はその中で、存在をログインさせる。

小さなジョークを投げ続ける。

笑いは武器だ。皮肉は防具だ。

ユーモアは、カロリーメイトよりは栄養がある(たぶん)。


「都市に真実はあるのか?」

「あるさ。ただし、バグってるけどな」


つづく──(バグらなければ)。


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初めての転生 小林靖明 @yasuakikobayashi

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