第3話 再び、ひなちと

「ねぇ、有賀P、曲まだ出来ないの?」


 俺に腕枕をされながらひなちは甘ったるい声を出す。


「あー、曲……ねぇ……」


 この子、曲に対してかなりのご執心なんだよな。しつこくせっついてくるし、いくら相性が良くてもそろそろ潮時かなぁ……。


「あたし、もうこれで四回も有賀Pに抱かれてるの。あたし、これでも将来有望って言われてるアイドルの卵なの。そのあたしがリスクを承知で有賀Pに抱かれてるのよね。だから、さっさとあたしのグループに曲を書いてくれてもいいんじゃない?」


 自分で『将来有望』とか言うか? この子どんだけ自意識過剰なのよ。


「あー、分かった分かった。分かったから今日はそろそろ帰れ。遅くなるし。な」


 俺は財布を取ろうとベッドから抜け出す。ひなちに背を向けてジャケットのポケットを探っていると、俺の頭部に『ゴツン!』と凄まじい衝撃が走った。


「いっ……! なんだ……!?」


 振り返ろうとしたその刹那、さらなる衝撃が俺に加えられた。


 遠のく意識の中で、「有賀Pが悪いのよ……」というひなちの低い声が聞こえた。

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