第10章:春の新学期
春の風が校庭の桜を揺らし、淡い花びらが空から舞い落ちる。校舎の窓から差し込む光は柔らかく、教室を温かく照らす。高橋遼は新学期の教室に入り、少し緊張しながら自分の席に腰を下ろした。
「遼くん、おはよう!」
佐藤美咲の明るい声が教室に響く。彼女は新しい制服を整え、少し照れながらも笑顔を浮かべていた。
「おはよう、美咲」
遼も自然に微笑む。春の光の中で、昨日までの冬の思い出が鮮やかに蘇る。放課後の図書室、初めて一緒に帰った帰り道、冬の寒さの中で交わした視線――そのすべてが、心の中で温かく光っていた。
授業が始まる前の短い時間、二人は隣同士の席で軽く会話を交わす。言葉の端々に照れや微笑みが混ざり合い、自然な親近感が生まれる。
「遼くん、今年も一緒に頑張ろうね」
美咲の声には、ほんの少しの真剣さと、少しの甘さが混ざっていた。
「うん、もちろん」
遼は小さくうなずく。言葉は短いが、互いの気持ちは確かに伝わっている。
授業が始まると、教室は静かになり、ノートの音やペンの走る音が響く。二人は時折視線を交わし、微笑み合うだけで心が通じることを感じる。
休み時間になると、校庭に出る。桜の花びらが舞う中、二人は自然に肩を並べて歩く。風が頬を撫で、花びらが指先に触れる。遼は思わず、美咲の手を軽く握りそうになる衝動を感じるが、ほんの少しだけ距離を保つ。
「遼くん、見て、この花びら!」
美咲が指先に舞い落ちた桜の花びらを見せる。遼も笑顔でその小さな花びらを見つめる。
「春って、やっぱりいいね」
「うん…なんだか、新しい気持ちになる」
新学期の始まりとともに、二人の関係も自然に新しいステップを踏み出していた。言葉だけでなく、視線や仕草、沈黙の中で互いの想いを確かめ合う。春風に揺れる桜の花のように、二人の距離も柔らかく、でも確実に縮まっていく。
放課後、図書室で二人は再びノートを広げる。春の光が差し込み、机の上に柔らかい影を落とす。勉強しながらも、視線や微笑みのやり取りで、互いの心が自然に近づく。
「遼くん、今年も一緒に頑張ろうね」
美咲が再び微笑む。
「うん…ずっと一緒に」
遼も答える。短い言葉だが、二人の心の中には確かな絆が生まれていた。
桜の花びらが舞う教室の窓から、外の景色を眺めながら、遼は心の中でそっとつぶやく。
『これからも、美咲と一緒なら、どんな日も特別になる』
春の新学期は、ただの日常の始まりではなく、二人の物語がさらに深まり、青春のページに新しい章を刻む時間となった。
放課後の図書室 藍川陽翔 @haruma888340
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