第4章:図書室の秘密

放課後の図書室は、学校の喧騒から隔絶された静寂に包まれていた。窓の外では、柔らかな夕陽が校庭をオレンジ色に染め、図書室の机の上に影を落とす。高橋遼はいつもの席に座り、ノートと参考書を前に置いた。


しかし今日は、いつもと少し違った。隣に座る佐藤美咲との距離感が、自然でありながら、どこか特別な空気を帯びているのだ。遼は呼吸を整えながら、心の奥の高鳴りを感じる。


「遼くん、この問題、どうやって解くの?」

美咲が小さな声で質問する。声は柔らかく、耳に心地よく響く。遼は視線を彼女のノートに向けながら、説明を始める。


「ここはね、こう考えると分かりやすいよ」

ペンを走らせながら説明する遼。その声は落ち着いているが、内心は少しだけ緊張していた。隣に座る美咲の手の動きや表情、微かな笑みを意識せずにはいられない。


美咲はペンを止め、少し照れたように微笑む。「なるほど…ありがとう、遼くん」

その一言に、遼の胸の奥がじんわり温かくなる。言葉以上の感謝が、二人の間に流れた。


静かな図書室の中で、互いの息遣いや鉛筆の走る音が、心地よいリズムとなる。外からの雑音は届かず、ただ二人だけの時間が広がる。


「ねえ、遼くん…」

美咲が少し声を潜めて呼ぶ。遼は目を上げ、彼女の顔を覗き込む。


「うん?」

「この図書室…二人だけの秘密みたいだね」

美咲の言葉に、遼は思わず微笑む。確かに、放課後の図書室は二人だけの特別な場所になりつつある。


二人はノートを閉じ、一瞬だけ視線を交わす。言葉はなくとも、互いの気持ちは伝わっている。遼は心の中で、少しだけ勇気を出して言葉を選ぶ。


「美咲…ここで勉強するの、楽しいよ」

小さく、でも真剣な声で言う遼。


美咲は顔を赤らめながらも、嬉しそうに微笑む。「私も…遼くんと一緒だと楽しい」


その瞬間、図書室の空気がさらに柔らかくなる。外の冷たい風や夕陽の光も、二人の心の温かさを際立たせるようだ。


ページをめくる音、鉛筆の走る音、沈黙の間の微かな呼吸。すべてが二人だけの世界を作り上げている。互いの存在が、言葉にしなくても心を通わせる手段となる。


「ねえ、遼くん…このまま、もう少しだけ一緒にいてもいい?」

美咲の声は小さく、でも真剣だった。遼は目を見開き、胸の鼓動が高まる。


「うん…もちろん」

言葉と同時に、彼の手が自然とノートの上で動く。二人はまた机を挟みながらも、互いの存在を意識し続ける。


外の夕陽が沈み、図書室は薄暗くなっていく。だが、二人の心の中には、温かく静かな光が灯っていた。放課後の図書室は、ただの勉強の場所ではなく、二人だけの秘密の空間となったのだ。


その夜、遼は帰宅しても胸の高鳴りが収まらない。美咲と過ごした一瞬一瞬が、まるで宝物のように心の中で輝いている。

彼は心の中でそっと誓う。


「この特別な時間を、大切にしたい…」

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