第五話
※千猫による聞き込みの記録。
※対象者 機器メンテナンス業者 河野さん(46歳)
ああ、この工場ねえ、人が定着しないんよ。俺はたまにくるだけだから関係ないけどね、ほんと担当者がコロコロ変わる。
あれは俺がここの工場の担当になった頃の話だ。メンテナンスってのは工場が稼働していないときにしか出来ないからな、点検は基本的に平日の夜か土日になる。
あれは土曜の午後、いつもみたいにこの工場に来た時のことだったな。点検なんかを済ませてるとさ、妙に工場内に人が多いことに気がついた。
休みの日なんだから当然工場は稼働していないはずさ。何してるんだか気になった。ま、依頼が立て込んでて土日もラインを稼働させることだってあるからさ、それかななんて思ってたんだ。
でも、どうにもおかしい。なんだか連中がそわそわしてるんだ。妙に空を気にしてる。そんで、日が暮れる頃だったかなあ。その連中が移動し始めたんだ。中庭に人が集まり始めた。俺はもう帰るとこだったんだけど、駐車場に行くには中庭を通らなきゃならねえ。なんか大事な会議とかだったら、俺がいたらまずいだろ。要するに出るに出られなくなっちまったってわけだ。仕方ねえから待ってたのよ。
そしたらさ、一番先頭のやつが変なこと言い出したんだ。少なくとも俺の知ってる言葉じゃなかったな。ええと、確か、あんもんかいほう、とか、げいほうしゅくこう、とかなんとか。
そしたらさ、急に空が曇り始めて、雷が鳴ったんだ。それまで晴れてたはずなんだけどさ。
その連中がさあ、一斉にバンザイのポーズっていうのかな、両手を上げて、わあわあ言ってるんだ。まるで何かめでたいことでもあったみたいに。新年のお祝いかと思ったぜ。ほら、よくニュースでさ、年があける時の海外の様子だとかで、大騒ぎして祝ってるやつ。そんな感じだったよ。なんかヤバいところを見ちまったって思ったよ。
そしたらさ、空が光ったんよ。まるで昼間みたいに明るくなった。それ見た連中が、さらに沸き立つんだよ。奇跡が起こった、とかそんなこと言ってた。異様な光景だった。そんで、連中が熱狂してる隙に、見つからねえように逃げ帰ったってわけよ。俺がみたあれは何だったんだろうな。
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