手袋を脱いで指紋を残す夜
ドアが思い切り開けられたかと思うと
ドアの隙間に革靴が滑り込んできた
しかもその革靴からは
絶対的な意志の強さを感じさせた
相手は手に手帳を持っていた
丁寧な口調で
任意ですが同行願います
そんな事を言われた
そこからは彼らの話し言葉は頭に入らなかった
でも どこかホッとしている自分もいた
化粧もそこそこに
髪はほつれたままで
パトカーに乗せられた
気付くと取調室で聴取されていた
弁護士は不要だと思った
目の前の刑事に向かって
勝手に言葉が口から出てくる
だから、
あの人は自分から
ロープに首を入れたんです
私の手を握ってロープを私に握らせた上で、、、
そして自ら、、、命を絶ちました
その時は私は混乱してされるままになつていたのです
私に死んでいく自分の姿を見せたかったのだと思う
私は、必死になってロープからあの人の身体を外した時には手遅れでした
信じてもらえないと思いますが
しばらく放心状態でしたが、事の重大さに気が付き、証拠隠滅をしました
自分が疑われるのはわかりましたから
あの人とは昨年別れましたが、ストーカー被害に遭っていました、警察にも相談記録があると思います
刑事が後ろにいる他の刑事に
目配せをしていた
何故か
あの人が私から手袋を脱がせた時に
恥じらうような表情を浮かべたのを
急に思い出した
あの人が私の指先を見る眼は、
どこか恍惚としているかのようだった
あの人は手袋を脱ぐ時の私の指先を
愛していたのだろうか
そしてそれが自分から離れていく時に
死を選んだのだろうか
手袋を脱いだ私の指で
自分の首にロープを
かけてもらいたかった
のだろうか
(fin.)
俳句と散文 「手袋をはずしたら」 よひら @Kaku46Taro
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