主(ぬし)
シバカズ
第1話 メッセージの主
メッセージとは、伝言や声明であり、また、それらを送り届ける人のことをメッセンジャーという。
馬鹿と天才は紙一重という言葉があるように、この学校には、一風変わった着眼点を持つ者たちがいた。
かくいう広一も心霊や超常現象というオカルト系が大好物で、入学早々にオカルト研究会に入会した。
この時の広一は、まさか自分が研究会会長を辞任させるとは夢にも思わなかった。
広一には、どうしても研究したい分野があるのだが、偶然にも、この研究会の会長を務める
細胞の活性化、脳のバックアップ、死という概念の消失。一言でいえば、広一の研究したい分野とは不老不死であった。
よって不老不死、正確には会長の不死という結果は、突然会員たちの目の前に提示された。
それは物理的にでもあり、心理的にでもある、姿なき形として……。
まず、最初の報告は、寄町要一が死亡したという心理的なものであった。
その後、一之瀬広一が見せられたものは、要一の
落ち込む会員たちだが、ふと気になり、会長のパソコンを立ち上げた広一の目に、あるものが映った。
それは『メッセージ』と書かれたファイルで、会長が死後の為に残した遺書のようにも見えた。
広一は怖々ファイルを開くと、中身は白紙であった。
白紙のメッセージに呆れた広一は、皮肉を込めたメッセージを打ち込んだ。
『不老不死じゃないのですか?』と。
するとその文章は改行され、新たな文面が勝手に表示された。
『僕は不老不死にはなれなかったが、不死の身体を手に入れた』と。
会員たちが会長のパソコンを検証した結果、会長は現実世界では死亡したが、電脳世界で生きていることが証明された。
検証といっても、全て会長のパソコンに書き込まれるメッセージが説明してくれたのだが……。
会長が在学中に行なっていた不死の研究は、主に脳内意識をバックアップし、電脳世界に転送できないか、という突拍子もない発想からきていた。
100年で肉体が滅んでも、意識さえ永続して保てる環境にあれば、人間は不死の肉体を得たのも同義であるという。
会長のパソコンに意見を打ち込めば、電脳の会長がそれに応えてくれる。
まさに姿なき形を持つ命とのやり取りに、会員たちは自らの命を絶って研究成果を挙げるとは、流石は会長と賛辞を呈した。
しかし、広一は要一からのメッセージに違和感を覚えた。
会長のパソコンには、直近の出来事から、食べた物まで送られてきていた。
肉体を持たない要一が、学内で起こったことを把握し、まして食べ物を必要とするなど、馬鹿げている。
——広一は慎重に姿なき者の捜索に移った。
会長のパソコンに送られてくるメッセージ元を探り、校内に発信元のサーバーがあることを突き止めた。
海外のサーバーを経由していたら特定は困難であったが、メッセージの主はダイレクトにこの学内のパソコンルームから、会長のパソコンにメッセージを発信している。
広一は研究会の活動時間に、会長のパソコンから難読長文を送り、急いでパソコンルームに駆け込んだ。
すると案の定、先ほど送った広一からの長文を熟読している要一がいた。
彼は死んでおらず、不死の身体を手に入れたと他の会員が知ったら、どんな反応が画面を通じて返ってくるのか知りたかったという。
自分が死んだと見せかけておいて、死者からのメッセージを送るという、オカルト研究会らしい
メッセージの主 完
第2話 ゴーストの主へ続く……
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