サルネージ
秋乃楓
第1話 来訪
遥か先の未来。
とある施設で突如として大規模な虐殺が発生。
それは何かしらの目的で開発されたであろう戦闘型ユニットが暴走した結果、起こった事件である事が後に判明する。しかし暴走した原因は解らぬまま殺人犯は転送システムを利用し逃走、2082年から54年も前の2028年へ飛ぶ。
過去へ飛んだ敵を追うべく同じく飛んだのは1人の少女。
彼女もまたとある理由を抱え、それを追っていた。
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何もない森林地帯。
そこへ雷鳴の様な音と共に空間から現れたのは程良い肉付きを持つ全裸の少女で
腰まで伸びた薄い艶のある緑髪に加えて黄色い瞳を持つ左右の目は目付きがやや鋭く、整った顔立ちには未だあどけなさが残る。
その首には銀色の輪が取り付けられていて[2610]という数字が彫られていた。
「...時間軸も座標も間違いなし。正確に送り込むのは認めるが衣服が無いのは癪に障る。連中は女を何だと思ってるんだ? 」
透き通る様な声でそう呟き、後から来た銀色のアタッシュケースを開いて
中身を空ける。そこには着替えと思われる黒のタンクトップに最低限の装備
一式が用意されていてその傍らにはスマホの様な端末がある。
それを起動させると男性の声でそれは話し出した。
[起動確認。コード2610、お前の任務は── ]
「...逃げた犯罪者の抹殺。それよりちゃんと刑期は短縮してくれるんだろうな? 」
[それはお前の働き方次第だ。 お前の様な存在がこうして生きていられるのも全て我々の存在があってからこそだ、それを忘れるな。また任務を放棄した場合は── ]
「...首の時限装置を遠隔で作動、私を殺すんだろう? 」
[解ってるのなら良い。敵は時期にこの星へ来るだろう、座標は既に転送済みだ ]
「...あぁ、解ってる 」
彼女はその場で着替えてからプロテクターを装備し各種武器を
装備すると僅かな溜め息をついてからその場を立ち去った。
森林を抜けて向かった先は市街地方面で彼女は人混みに紛れる形で
進み続け、路地の角を曲がった先にある古い一軒家の中へ。裏口から鍵を破壊して入ると土足のままリビングへ来て足を止めた。
「ジョン、どうだ? 」
[到達する時刻は後数時間だ。此処に住むのか? ]
「寝床だ。住まいは必要だろう?こういう古臭い方が寧ろ目立たなくて済む 」
[あまりこの世界に痕跡は残すなよ?厄介だ ]
「解っている...敵の名は? 」
[まだ決まっていない。どうせならお前が決めても良い、その方が解り易いだろう? ]
「そうだな...大量虐殺を意味するカーネイジの別読みでカルネージ、それが奴の名だ。我ながら良い響きじゃないか? 」
[了解、そう登録しておこう ]
2610という少女は武器の点検や装備の調整を始め、
その時を待つ事にした。それから既に日は傾き、19時となった事を広場にある大きな時計の長針と短針が示して伝える。そして同時に周囲に落雷が発生し地面へその内の一発が命中した。
現れたのは全身が黒く、男性の様な肉付きをし頭部には目の代わりに赤い
Vの字が走ったラインが入っている。右肩には銀色をした短いキャノン砲の様な装備の他に左腕には長方形を象った銀色のガントレットの様な物をそれぞれ装備している。また、腰にはガンベルトの様な物が巻かれていてそこにはライフルが携帯されていた。辺りを確認したそれはガントレットを展開させて何かを呼び出すと
それを見てから歩き始めた。
足音は人間が立てるそれではなく、何処か重厚感がある。
その足でそれが向かったのは学校...それも高校だった。途中で大柄の男と擦れ違うと
相手の容姿を見真似て姿を変えた。髪は茶色で身体つきは筋肉質で上に灰色のジャケットを、下は深緑色のジーンズと黒い靴を着用し歩いて行った。
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「なぁ航平、もう帰ろうぜ? 」
「待ってくれよ祥太...可笑しいな、確かこの辺だった筈なんだけど...... 」
夜の校舎、そこにある職員室で学生服を着た2人の少年が探し物をしていた。
授業中に没収された漫画本を取り返そうと担任の教師の机を必死になり
探していたのだった。
だが中々見つけられずに手招いていると足音が聞こえて思わず航平は手を止めて
捜索を中断する。息を殺して足音を聞いていると何処か重厚感がある様な
足音が聞こえて来る、2人は様子を見に廊下へ出ると大柄の男と目が合う。
相手は足を止めてからこう呟いた。
「......コウヘイはお前か? 」
「そうだけど...誰だ? 」
「...ターゲットの排除を開始する 」
男が右腰のホルスターから銃器を引き抜いて銃口を差し向ける、
赤いレーザーサイトが彼の胸へ向けられるも咄嗟に逃げ出す仕草を取ったと同時に引き金が引かれて弾丸が放たれた。
弾丸は航平の左側後方にあった柱へ命中しそこが大きく抉れている、
彼は実弾である事を知るや否や賢吾を連れて駆け出した。
「何だあのオッサン!?いきなり撃って来たぞ!? 」
「お前の事を探してるんじゃないのか!?また何かやらかしたとか──!! 」
「知るか!兎に角逃げるぞ!! 」
2人が逃げたのを知った男はそのまま追い掛けて行く、逃げた先も方向も
彼には全て解っていた。この場所のルートは全て頭にインプットされている事から逃げたとしても追い詰めてしまえば後はどうという事はない。
一方の航平達は職員室がある2階から何とかして逃げようとしたが唯一降りれる階段を通り過ぎてしまい、非常階段から逃げる事を強いられてしまう。
夜の校舎で不審者に追い掛け回されるとは思わなかっただろう。
必死になって非常口の前へ来るとドアノブへ手を掛けて開こうとする、
だが背後から迫る足音はもうすぐ近くまで来ていて漸く開いたと同時に現れたのは
黒色のホットパンツに加えて腹部を出した黒のタンクトップの上に黒いジャケットを羽織り、膝下まである同色のロングブーツを履いた長い緑髪を持つ少女、目が合った瞬間にこう言われた。
「──伏せろ!! 」
咄嗟にその場へ2人が屈むと少女は背負っていた黒いショットガン、M1887と似たそれを右手に構えて左手を添えると同時に直後に3発発砲する。鈍い音が聞こえた直後に追って来た男が吹き飛ばされると男は背中から倒れてしまった。身に付けている服には所々穴が開いている。
「...死んだか? 」
[いや、まだだ! ]
素早く引き金後方のレバーを下方へ引いてショットシェルを排莢、身構えると
男がその場に起き上がった。それでも少女は表情1つ変えずに更に発砲し仰け反らせると反撃で発砲されるがそれを辛うじて躱す。舌打ちし再び排莢してから5発のショットシェルを装填すると男へ向けて発砲した直後に背後の少年達へ叫んだ。
「逃げろ、行け!早く!! 」
再び構えた少女は発砲するが銃身を右手で掴まれた事で天井へ狙いを逸らされてしまう、揉み合った直後に握られた左手が少女の腹部を殴り付けると鈍い声を上げて
悶える。それでも彼女は抵抗して相手の頭部へ目掛けて頭突きを喰らわせてから
今度は力任せに相手を壁へ叩き付ける。強引に払い除けてから今度は腰の後ろから
取り出したのはレバーの付いた黒い筒の様な物、そのレバーを引いてピンを口で引き抜いて吐き捨てるとそれを投擲し走って非常口へ飛び込む。
直後に轟音が響き渡ると辺りは吹き飛んでしまった。
「流石のアイツもこれでくたばっただろう...アンドロイドの癖にやけに頑丈過ぎないか? 」
[敵の身体は特殊合金製だ、弾丸程度なら喰らっても倒れない。強い衝撃だろうと機能を一時停止させる程度でしかない ]
「プラズマライフルなら容易だろう? 」
[あれは試作品段階でまだ実用化されていない。それにお前にはそれを使用する権限が無い ]
「...そうだったな。私は犯罪者だからな 」
階段の真下で呆然としている2人を見て彼女は僅かに溜息を吐く。
すると黒い髪をした少年が彼女の方へ近寄って話し掛けた。
「何なんだよお前!?いきなり現れて滅茶苦茶して!! 」
「滅茶苦茶?それは心外だ、私はお前をわざわざ守りに来てやったのにその言い草は何だ? 」
「守るだって?何かの冗談だろ、そもそもお前は誰なんだ? 」
「囚人番号2610...名前はセラ、お前が住む世界より遥か未来から来た 」
「未来だって?お前、どうかしてるんじゃないのか? 」
「......信じようが信じまいがお前の勝手だ。恐らくもう少しで奴は
セラと名乗った少女は左手の親指を立てて合図するが同時に非常口のドアが
大きな音と共に蹴り破られる。先程の男は顔や腕等に痛々しい擦過傷が見られるが
やはり生きていた。
「ちッ...しつこい男は嫌われるぞ? 」
再びショットガンの銃口を向けて上に居る相手を威嚇する、一歩踏み出した瞬間に
発砲するがやはり怯む程度でしかない。直後に何かの起動音が聞こえたと同時にセラは航平達を開いたドアから突き飛ばして出口へ追いやって自分も外へ飛び出す。
着弾と同時に非常口の入り口が壁ごと破壊されてしまうとセラも反動で吹き飛ばされて地面へ叩き付けられてしまった。
重厚感のある足音が階段を下り、少しずつ此方へ迫って来ている。
咄嗟に手放したショットガンを拾って銃口を差し向け素早く引き金を引いた。
再度鈍い音が響くも間合いが詰められて首を掴まれた状態で起こされる、
撃とうにも撃てぬ状態で背中から壁へ叩き付けられた。それも1度ではなく
2度も3度も。
「あぐぅうッ!?こ、この...バケモノめ...ッ!! 」
至近距離で睨み合う中、非常ベルの音が辺りに鳴り響く。
抵抗し逃れようともがき暴れては相手を蹴り飛ばして振り解くと
首を擦りながらセラは相手を睨みつけていた。
カルネージカルトは何者でセラとはどういう関係なのか......
そして何故、航平が狙われるのか。その意味は未だ解らない。
サルネージ 秋乃楓 @Kaede-Akino
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