頭の中を ただ文章にするだけの 小説思考法
すぱとーどすぱどぅ
第1話 頭の中はすでに完成している 情景が浮かぶ人ほど言葉で迷う理由がある
最初に、安心してください。
あなたは、もう小説が書ける人です。
まだ形になっていないだけです。
それだけの話です。
頭の中に、場面が浮かぶ。
登場人物が動く。
空気や温度まで感じる。
ここまでそろっている人は、実は多くありません。
そして、ここまでそろっている人ほど、あるところで止まります。
言葉が出てこない。
文章にしようとすると、急に手が止まる。
もし今、あなたがそうなら。
それは才能不足ではありません。
理由は、とても単純です。
人の頭は、一度にたくさんのことを処理できないからです。
これは、アメリカの大学を中心に行われてきた認知心理学の研究で、何度も確かめられています。
人は同時に多くの情報を扱おうとすると、思考のスピードが一気に落ちる。
そして、行動が止まる。
あなたの頭の中では今、
色
音
匂い
感情
意味
全部が同時に立ち上がっています。
それは、感性が豊かだからです。
でも、その状態で文章を書こうとすると、選べなくなります。
選べないと、人は止まります。
これは意志の問題ではありません。
実際、カリフォルニア大学などの研究では、
人は考える作業と作る作業を同時にやろうとすると、パフォーマンスが大きく下がることが示されています。
つまり、
考えながら書こうとすると、
書けなくなるのは自然なことです。
ここで、多くの人が間違えます。
自分は文章が下手なのではないか。
語彙が足りないのではないか。
才能がないのではないか。
でも、違います。
書けない人は、そもそも悩みません。
情景が浮かばないからです。
あなたが悩んでいるのは、
見えすぎているからです。
では、どうすればいいのでしょうか。
答えは、とてもシンプルです。
小説を書くとき、
最初にやることは、うまく書くことではありません。
一つ選ぶことです。
全部を書こうとしなくていい。
一つでいい。
これは、集中力の研究でも同じです。
人は、注意を一つに絞ったときに、最も自然に動ける。
これは、多くの大学研究で共通している結論です。
たとえば、場面を一つ思い出してください。
空の色。
風の強さ。
足音。
人の表情。
この中から、一つだけ選びます。
音でもいいです。
色でもいいです。
温度でもいいです。
選んだものだけを書きます。
たとえば、靴音。
硬い地面を踏む音。
少し重いリズム。
間隔。
それだけで十分です。
他の情報は、書かなくていい。
消えたわけではありません。
背景に下がっただけです。
読み手は、その一つを手がかりに、残りを想像します。
これは、人間の脳が自然にやっていることです。
だから、
全部説明しなくても伝わります。
むしろ、
説明しすぎないほうが、情景は強くなります。
情景が浮かぶ人ほど、言葉で迷います。
それは、弱さではありません。
豊かさの副作用です。
今日は、完璧な文章を目指さなくていい。
評価されることも考えなくていい。
ただ、一つ選んで、一文書いてみてください。
それが、止まっていた物語を動かす最初の一歩になります。
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