転生したら歌わされたあげく世界を救えと言われた

@jiroo10

第1話魂と魂の繋がり

 体に皮膚をまとうことも忘れて、胸だけが熱く引っ張られる。


 誰かに呼ばれてる


 遠くまで広がる薄い煌めきの粒子を含んだ温かい世界に、下田 礼穂(しもだ あきほ)は少し不安を感じた。

 

 「いったいどこまで行くの?」


 やっとゆっくりブレーキをかけた場所には一つのテーブルと椅子があり、髪が床につきそうなほど長いその御方が柔らかい眼差しで礼穂を見つめている。


 「やっと来ましたか、礼穂」

 「私……ここは天国?私は確かあの日事故にあって……両親は?両親も一緒にいたはずです!お父さん?お母さん!?」

 「安心してください。あなたの両親は無事に天国へ渡り輪廻転生の輪の中へ入りました」

 「輪廻転生……?まあ二人とも天国へ行けたならよかったけど、あたしは行けなかったという事ですか?」


 礼穂の前に立った御方の髪がふわりと広がると、その後ろから恥ずかしそうに幼い女の子が現れた。


 「お姉ちゃんも死んじゃったの?」


 少女の瞳は薄い桜色をしていて、生きていた世界では見たことがない青みがかった銀髪をしている。

 ぎゅっと御方の長い髪を握りしめ、今にも泣き出しそうだ。

 礼穂は静かにかがんで目線を合わせ「そうだよ」と、優しく答えた。


 「正確に言えば貴女はまだ死んでいません。それは貴女のほうがよく理解しているでしょう」

 「え!?あたし死んでないの!?」

 「いえ、礼穂あなたは死んでます。こちらの小さな魂に語りかけましたよ。あなたたちは魂と魂が強く惹かれあい、今ここにいます」

 「たま……魂……?」


 一瞬の静寂を裂くように少女は泣き出した。


 「もう生きていたくない、戻りたくない、お姉ちゃん、助けて、助けて!」


 少女の小さな頭をなでてなだめながら、目だけで御方に説明を求めた。


 「小さな魂………彼女は世界でやり遂げなければならない使命があり、中々簡単には死ねない体を持っています。しかし、置かれてしまった状況があまりにも悲惨でいつの日からか何度も肉体と魂が離れてしまうのです」


 (いや、そんな……脱走兵みたいに)


 「礼穂。あなただけがこの少女を救うことができます」

 「あき……ほお姉…ちゃん」

 

 (あきらめるにはまだ早くない?まだほんの数年しか生きていないじゃない……この先笑える事だってあるはず……)


 「お姉ちゃん…私はね浄化の巫女としてもう100年以上王家の塔に縛られ、ずっと……」

 「ひゃ…100年!!!?嘘でしょう?」

 「8歳の時に黒魔法で縛られたから見た目はずっとこのままなの。何度も何度も死にたかったけど許されなかった。やっと、今日あなたと魂が繋がり入れ替わる事を許されたの」


 礼穂は説明が全然頭に入ってこなかった。ただただ、泣きながら話す少女を抱きしめ自分だけが助けることが出来るのだと強く感じる反面、なぜ自分なのか分からずどうしたらいいのだろう?と、御方を訝しげに見た。


 「この小さな魂の代わりに生きてやって欲しい。礼穂の魂にはあちらの世界に適応出来る強さがある。時間がもう……ない。決断してくれ」

 「えー!ひどい。えー!?全然わかんない全然わかんないけどこの少女はどうなるの?私と変わったあとは?」

 「しばらくは私が面倒を見る。すぐには消えないだろう」


 救うこと出来る。

 代わるだけでこの少女は長い年月の苦しみから解放される。

 それが出来るのは私しかいない…。


 

 「……………………………はぁ~…わかりました」

 「決まりだそれでは」 

 「ってちょっとちょっとそれは早くなーい!?えーーー消えていくーちょっと!!」



 下田 礼穂の魂は新たな肉体へと転生した。

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