サンタに一度でも理想の自分を願ったら、もう二度と戻してくれない。
そして、小学1年生になってしまえば、まだ理想の自分を願っていなくても、サンタは願いを叶えてくれなくなる。
だから。
あの子は、サンタに「足が速くなること」を願って、陸上部のエースになった。
あの人は、サンタに「幽霊が見えるようになること」を願って、いつも見えない誰かと話している。
あの先生は、サンタに「猫に好かれる体質になること」を願って、今黒板の前で猫たちに囲まれている。
願いを叶えてしまった彼らは、もう元には戻らない。私も、そう。
誰も好きにならない。
私は子供の頃に、そう願った。
どんなに優しくてかっこいい男子にも、
どんなに勉強ができてお金持ちの男性にも、
いつもおしゃべりしてくる女の子にも、
いつも可愛くあろうと努力している美少女にも、
私は誰一人として、好きになったことはなかった。
それは、親ですら、そう。
どうして、こんな願いをサンタに伝えてしまったのだろう。
過去に戻って、私をとめたいとは思う。
でも、たぶん例えば、何度この人生を繰り返したとしても、私は同じ願いをサンタに伝えていたに違いない。
だって、大好きなおばあちゃんが死んで、悲しかったから。
葬式でずっと泣いていた。
悲しくて悲しくて、もう会えないって、そんなの嫌だと思った。
クリスマスの夜だった。
葬式の中、私のところにやってきたサンタが、「願いを言ってごらん」と淡泊に言った。
ふわふわした白いもこもこが飾られた赤い衣装と、長い髭。
私はそんな彼を見上げて、願いを言った。
「悲しまないように、誰も好きにならないでいたい」
それが、子供だった私の一生懸命な願いだった。
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