ドジサンタは静かにプレゼントを置けない

魔王の囁き 

第1話

クリスマスの深夜。

部屋は豆電球だけがほのかに灯り、ベッドの上では青年が静かに目を閉じていた。


(……ドジるな……ドジるなよ……)


カサッ。


天井の方から、何かが引っかかる音が鳴る。


「ひゃっ……!?」


小さく、慌てた声が室内に響く。


次の瞬間、ドスンと柔らかい何かがベッドの端にぶつかった。


(……来た)


青年は心の中でため息をつく。

入って来たのサンタだ。

しかも――毎年必ずドジなやつが来ていた。


「し、静かに……静かに……プレゼント置くだけ……」


小声で自分に言い聞かせながら、赤いサンタ服の少女が、ベッドの横にしゃがみ込む。


……そのサンタ服は、どう見ても布の面積が仕事をしていなかった。


袋からプレゼントを取り出そうとして――


「わっ!」


バランスを崩したサンタが、前のめりに転ぶ。


むにっ。


(……当たった)


胸が。

思いっきり。


(起きるな俺……! 反応するな……!)


青年は必死に寝息を演じる。


「ご、ごめんなさいっ……! 起きてない……よね?」


サンタは真っ赤になりながら、慌てて体勢を立て直す。

だが今度は袋の紐がベッドに引っかかり――


「きゃっ!」


再び前のめり。


今度は肩に顔が埋まる。


「……あ、あれ……? なんか……あったかい……?」


サンタは数秒フリーズし、自分が何に当たっているか理解して、頭から湯気が出そうな勢いで飛び退いた。


「ち、違います! わざとじゃないです! ほんとです!」


(誰に言ってるんだ……)


ようやくプレゼントをそっと置き、サンタは深呼吸して小さく頷く。


「よし……任務完了……」


そう呟いて振り返った瞬間、マントが椅子に引っかかり――


「ひゃああっ!?」


ガタン、ドサッ。


今度は床。


完全に起きなきゃ不自然なほど大きな音だった。


青年は、もう観念した。


「……サンタさん」


その声を聞いたサンタが凍りつく。


「……お、お起きてたの?」


「うん。ずっと」


沈黙。


次の瞬間。


「きゃああああああ!」


真っ赤なサンタは袋を抱えて猛ダッシュでを割って窓から脱出して行った。


――翌朝。


ベッドの横には、少し潰れたプレゼントと、なぜか小さな絆創膏が一枚置いてあった。


「……ドジすぎだろ」


青年は苦笑しながら、今年一番騒がしいクリスマスを思い出していた。

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ドジサンタは静かにプレゼントを置けない 魔王の囁き  @maounosasayaki

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