第1話 池悠島HOTEL殺人事件①
ゾワワという脳の神経を刺激された感覚から目を覚ますと意識の際はホテルの一室の灯りを捉える
思わず何かを探すように自分の顔を叩いてしまう
起き上がってベットに座るとピッタリと揃えられたビジネススーツを着ている自分のズボンのポケットに違和感を感じ財布を取り出してみる
赤星雲統/アカグモ スベル
自分の免許証を見れば当然だが自分の名前が分かるし赤髪に赤いネクタイをつけてビジネススーツを着こなしている見た目についても詳細に分かる
壮大な風景を見て道筋を失った旅人が思わず自分の手の平を見て生きていることを確認するように胸元に手を当てて自分の心臓の鼓動を感じるように
「どうやら長い夢を見ることに成功した訳か...」
部屋には縦に長い鏡に照明スタンドや小型冷蔵庫とラインナップから考えて格安のホテルなのだろうか
部屋の窓は外の強い風でガタガタと揺れている
何かが始まったような気がして寡黙な男は部屋のドアを開けて廊下に出て行くと
赤星雲以外の4人の客も部屋から顔を出して互いに何が起こったのだと互いを見回しながら4人は自分の部屋の鍵を閉める
他の階へと続く2つのエレベーターを確認すると何方も動いておらず赤雲星は非常階段の方に走って無駄に長い階段を駆け下りて1階にまで辿り着く
玄関から外に出ると時間は夜であり空に星が見える
衝撃から屋根も凹んだ車の上に仰向けで倒れているのは白いスーツを着て黒いネクタイを首にかけていた中年男性であり
車から滴る彼の背中から漏れだした血からは既に彼が助からないことが分かってしまっていた
赤雲星は自分の背後の建物の形状がビルのような物であり屋上を含めた5階の高さから飛び降りれば容易に死ねてしまうだろうと誰にでも分かる
幾つもの窓が並んでいる様を見て死体現場の空気感もあってか彼は妖怪の百々目鬼を思い出した
赤雲星に続いて他の数人の客達が押し寄せてくると皆一様に思わず声を漏らして丸眼鏡の男に至っては恐怖から後退り転けて更に死体から離れようとする
首にヘッドホンをかけて黄色のストラップ柄のシャツを着た若い大学生くらいの冴えない男はスマホを取り出して撮影を始める
「これマジでか...ホテルで自殺って...うわぁ...」
「オマエは何をしてる?」赤星雲は固い態度で聞く
「自殺だって記録も残るし良いよね?あー...悪いけどカメラの邪魔だし左に少し退いてよ?赤い人」
撮影してる彼は押しのけられるとコンクリの地面にスマホを落として苛立ちから後ろの女を睨む
出てきた青いショートカット髪のThe探偵といった様な服を着た偉そうな女は両手を腰にあてて腹から声を出して騒ぐ
「自殺などではないっっ!!これは殺人事件です...」
「ちょっ...急に押された...スマホ落としたじゃんか...あー...画面に傷...何すんっ...だよ...青い人」
「僕の名前は二見鏡狐...天才名探偵であり聡明な女性ランキング20位以内には入りそうな者です...学生時代のアダ名は"キョウちゃん可愛いね"です(探偵)」
二見鏡狐/フタミ キョウコと名乗った女は青い髪と茶色いチェック柄にスカートの探偵服を揺らしながら先陣を切るように歩き
取り出した探偵道具とされる虫眼鏡で死体から流れる血やらパンクしたタイヤやらを観察している
探偵漫画では普通かも知れない彼女の態度だが客の多くは常軌を逸してるようにしか見えずスマホについた土埃を落としながら先程の男も「キモ」と呟く
赤雲星は彼女の肩を掴み頭をポンと叩くと話す
「こういうのって警察とかを呼ぶのがセオリーなんじゃないのか?あと死体に近づかない方が良いだろ普通に」
「んん〜?"普通"という言葉は名探偵には似合いませんです...そういふ第一発見者のアナタは誰でふ」
「普通に噛んでるじゃねーか...赤星雲統...免許証もある...疑うなら色々と調べてくれても良い」
「ふむむふむ...死体に近づくなとか言う奴は犯人の確率が高いんですよ!!犯人犯人犯人...犯行現場は十分な高さがある屋上だと考えられます!!」
フタミが膝について何処からか取り出したメモ帳に第一発見者の名前は死体の状況などを書き写して興奮から犬のように鼻息を荒くしている
すると彼女の膝に死体の血がつきヒンヤリとした血液の感触に驚いた彼女は「ワッ!!」と大声を出して間抜けにも赤星雲の前に転けて倒れた
真顔の赤星雲はトドメを刺すかのように取り出したスマホを倒れた二見鏡狐の頭の上に置いて呟く
「置けるんだ」「置けるんだって何ですか!!」
【池悠島HOTEL殺人事件〜作られた真実とは〜】E
ホテルの割と豪華で小綺麗なエントランスにて集まった客達を中心としてフタミが歩きながら何かをブツブツと呟きながら考えている
赤星雲はソファに座ると先程はスマホを落とされていた隣のストライプ柄のシャツを着たマッシュ髪の青年の前に缶ジュースを渡しながらスムーズに話しかける
「色々と面倒だけど...少し気になることがあるんだが自己紹介ついでに君と会話しても...良いか?」
「あー...ボクは炎藤巡/エンドウ メグル...大学で軽音サークルに入ってる...池悠島/ちゆうとうに来たんだけど...まっさか殺人事件なんて...ダルいわ」
「聞きたいんだが警察は...此処に来るのか?」
「島の警察なんて来てもヘボもヘボだよ...警察も出てきた死体が自殺なら孤島にまで出張って来ないと思う...殺人だって言ってるのは青い人だけだし」
気づくと近くでメモ帳に炎藤の情報を書いていたフタミは鼻息を荒くしながら少しジャンプして人が死んだ状況の中で楽しそうにしている
「犯人候補は2人です!!」「うわでた青い人」
「今にも
自称名探偵の女は腰を振りスカートを揺らしながら2人の犯人候補を微笑みながら睨んで踊っている
「アナタの横の炎藤さんは死体を直ぐに撮影してましたからね〜!!死体を見たのに動揺しないなんて怪しいヤツです!!」
「オマエも動揺してなかったろ名探偵」
「名探偵は動揺しません!!この名前に聞き覚えは有りますか?車広凱/シャヒロガイ...死体のポケットから拝借した免許証から調べた情報によると彼は九州でも有名な車広不動産のオーナーみたいです!!」
「現場の保全とか諸々...分かってるのか?名探偵」
名探偵は赤星雲達とは離れた所に座っていた妖艶な雰囲気にピンク色の豹柄のパーカーをとジーンズの短いタイトスカートを着た金髪の女に話しかける
耳とヘソにはピアスを付けて露出の多い服装からチラリと見え褐色に焦げた肌は刺激が強く風体は平成のギャルそのもので赤星雲/アカグモ以外の男性陣は思わず息を飲んだ
「外に倒れている被害者について...知ってます?」
「アタシにも聞く感じ?てか...アンタって死体から金取ろうとしてたヤツじゃーん...今月は金欠になりかけてっから...分前とかくんね?」
アンナが化粧袋から口紅を取り出して濃い化粧を更に濃厚にしようとしているとフタミは詰め寄り叫んで誤解を解く
「免許証を取ろうと財布を見ただけです!!それに被害者は装飾品の類いは付けていませんでした!!
名乗ってください!!犯人なら逮捕します!!」
「うっわ!!分かったから声の大きさ考えろし!!名達杏奈/メイダツ アンナ...旅行中の美大生...あ...口紅ズレちゃったじゃん...」
フタミとアンナは周囲の人間の鼓膜など関係なしに大声で唾を飛ばしながら叫び合っている
美大生というより夜のメイクアーティストにしか見えないアンナは持ってきた自分のポケットの中に手を突っ込んで挵ると溜息をついた
「もう!!部屋にスマホ忘れたし!!アンタのせいでマジに苛つくんだけどヘボ探偵...大体なんで事件が起こってるのにフロントも従業員も居ねぇの?」
「そんなの僕も知らないです!!だからこそ僕が難事件を解決しなければならないのです!!」
「マジで何処に逃げたし...バカなんじゃね従業員」
「叫び声がしてたので!!外の死体を目撃してパニックになって逃げたのか...はっ!?第二第三の事件が起こる伏線なのかも知れませんね!!」
捜査情報をベラベラと喋る名探偵は次の標的に目を向けると詰め寄るように歩き天パでカーキ色のコートに丸眼鏡の明らかに怪しい男に話しかける
怪しげな男は近くにあったレコードプレーヤーのボタンを押すと楽しげな凄く薬物的でドロップなEDMソングが流れてくる
「ウルシビローショセツカ」自己紹介が早送りしたように素早い
探偵が困惑しながらメモ帳にグルグルとペンを走らせて解読不能の文字を書いていると男は再び名乗る
「漆日楼/ウルシビ ロウ...WEB小説家で人気は無いけど作品のために親からの仕送りを使いまくって船に乗り島に足を運んでるね...クソみたいな自殺を事件扱いしてる名探偵(笑)は目障りだと思ってるね」
「簡潔な自己紹介ありがとう...被害者と面識は?」
「くたばったジジイの事なら何度か見たことあるよ...島に来るまでのフェリーの中にアイツの広告が出てきてね?目障りだったから禿げた頭を百人一首みたいに引っぱたいてやろうかと思ったけどねぇ」
「つまり君が犯人ということですね」「ちがうね」
いい加減に見ていられなくなった赤星雲はフタミの肩を掴むと彼女を引きづってエレベーターの方に歩いていく鞄を持つように運ばれた探偵は文句を叫ぶ
「ぐびゃ!!何をするんですか!!逮捕すんぞ!!」
「もう事情聴取は済んだろ...事件現場を見に行くぞ名探偵フタ...蓋...フタマエ?」
「フタミです!!待って!!屋上に行くってアリバイとかホテルに来た理由とか深く聞いてませんよ!!」
「アリバイも何も俺達は叫び声を聞いて同時に部屋から出てきた...この5人が屋上から被害者を突き落とすことは不可能だという事だな」
二見鏡狐/フタミキョウコは引きづられながら不服そうな態度でギリギリと歯ぎしりをしてるが赤星雲は気にすることなく歩を進める
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます