僕だけ魔王に転生したんだが〜勇者召喚されたクラスメイトと戦えって言われても!?~

ナガワ ヒイロ

第1話 クソすぎる選択肢



 物語には悪役が必要だ。


 悪さした悪役に、様々な苦難を乗り越えてきた主人公とその仲間たちが正義の鉄槌を下すからスカッとする。


 悪役は負けるからこそ悪役なんだ。


 ファンタジーにありがちな魔王もまた、勇者という主人公に負けることでその役割を終える悪役でしかない。


 そんな魔王に僕は転生してしまった。


 いやまあ、転生せざるを得なかったと表現するのが正しいかも知れないけど。


 でも僕は負けられない。負けてはならない。


 だって勇者として異世界パルテシアに召喚されたクラスメイトたちは、僕の手で殺すことでしか元の世界には帰れないから。


 僕が死ねば、皆は日本に帰れない。



「魔王アイン!! 貴女を倒して、私たちは元の世界に帰るの!!」



 タチが悪いのは、神がクラスメイトたちに『魔王を殺せば元の世界に帰れる』と吹き込んだことだろう。


 お陰で僕は仲のよかったクラスメイトや密かに想いを寄せてた女子から命を狙われる始末だ。


 でも別にいい。


 僕は皆と違って転生だから、見た目も変わってるし、誰も魔王の正体が僕だとは思わないだろうから。


 だから。ああ、だからこそ。



「かかって来るがいい、矮小なる勇者よ。貴様に本当の絶望を教えてやろう」



 今日もまた一人、クラスメイトを殺す。


 そして、皆を日本に帰した後で僕を魔王役に据えやがったクソ神をぶち殺してやる。


 ……本当に、どうしてこうなったのかな。


 僕はクラスメイトと殺し合いをする羽目になった時まで、記憶を遡る。






◇ ◆ ◇






「君にはボクが管理する異世界、パルテシアに魔王として転生してもらいます」


「……はい?」


「じゃあ了承ってことで――」


「あ、今の『はい』は違います!!」


「おや、そうなのかい?」



 どこまでも続く真っ白な世界。


 上下左右前後の感覚が狂ってしまいそうな、自分がどこに立っているのかも分からなくなる不思議な場所に僕はいた。


 風邪の時に見る夢みたいだ。


 そして、僕の前には純白のワンピースをまとった褐色肌の美少女が一人。

 上手く言い表せないが、やたら存在感があって目が離せない。



「あの、貴女は……」


「あ、名乗ってなかったね。ボクは神だよ」


「……これ、夢じゃないですよね?」



 僕の問いに神を名乗る少女はくすっと笑った。



「現実だとも。ここに来る直前の出来事を思い出せるかい?」


「直前の出来事……たしか、教室でホームルームが始まるのを待ってたら足元で魔法陣みたいなものが光って……え、まじで神ってこと、ですか?」



 そうだとも、と少女は頷く。


 信じられないが、不思議な現象が起こったのは事実だ。


 受け入れるしかない。


 それに魔王に転生ってラノベの主人公みたいでわくわくする。



「あの、僕は魔王に転生して何をすれば?」


「何も難しいことじゃないよ。君にはしてもらいたいのは、勇者としてパルテシアに召喚されたクラスメイトとの殺し合いだ」


「クラスメイトと……え? 殺し合い?」


「そ、殺し合い」



 聞き間違いかと思ったけど、そうではなかったらしい。

 神はたしかにクラスメイトと殺し合いをしろと、そう言ったのだ。



「な、なんでですか?」


「ただの暇潰しだよ。神というのは退屈でね、面白いものを、興味を持てるものを常に欲しているのさ」


「あの、もしかして神様は神様でも邪神の類いだったりしますか?」


「ご名答、賢い人間は嫌いじゃないよ。あ、支配者なキャロルでも流そうか?」


「あ、結構です。SAN値削れそうなので」



 いや、冗談言ってる場合じゃない。クラスメイトと殺し合いだって?


 絶対にやだよ。



「僕に何のメリットがあって人殺しなんかしなくちゃならないんですか」


「まあまあ、最後まで話を聞いてよ。君はたしかにクラスメイトと殺し合いをすることになるけど、本当に殺すわけじゃない」


「……どういうことです?」


「君の手で殺されたクラスメイトたちはね、元の世界に帰れるんだ」



 何そのえぐいルール。



「もし、僕がこの提案を断ったら?」


「別にどうもしないよ? ただその場合、君は用済みだから魂を破壊して完全に無にする。クラスメイトは元の世界に帰る方法を探し続けて一生危険な異世界を彷徨うことになるだけだよ。君が気になってる女の子や友人たちも含めてね」


「……まじか」



 その時、ふと蘇ったのは日常の記憶だ。



『おはよう、『――』君。今日もいい天気ね』


『よっ、『――』っち!! ちょっと帰りに付き合ってよ!!』


『頼む!! どうやったら女子と仲良くなれるのか教えてくれ!!』



 僕に頻繁に話しかけてくれる友人たちの顔は鮮明に思い出せる。


 何より。



『あ、お、おはようございます、『――』さん』



 僕が気になってる女子。


 艶のある黒髪をお下げにして、メガネをかけたあまり目立たない彼女。フローラルないい匂いもした。


 その子を救いたいなら、神に従って魔王として転生し、彼女をその手で殺せってことか。



「……選択肢がクソすぎません? どうしてこんなことするんですか?」


「ん? さっきも言ったじゃないか。暇潰しだよ」


「暇潰しなら他にも色々あるじゃないですか!! ゲームとか漫画とかアニメとか色々!!」


「ボクは人間が好きなんだ。友情、努力、勝利、苦悩、落胆、絶望……君たちの魅せる全てが好き。だからこういう意地悪をしたくなるんだ」


「意地悪な自覚はあるんですね、クソ野郎。いや、クソ神」


「あはは、口悪いねぇ!!」



 にこにこと楽しそうに笑う神。


 きっと目の前の少女にとって僕の罵倒は子犬の威嚇なのだろう。



「子犬の威嚇なんて上等なものじゃないよ? 羽虫の羽音ってところかな」


「……さらっと心を読まないでください」


「で、どうするんだい? 魔王に転生するか、しないか。選択するのは君だ」


「っ、やりますよ!! やればいいんでしょ!!」



 クソ神が。


 いつの日か絶対痛い目に遭わせてやるから覚えてろよ。



「じゃあ了承も得たところで早速、こっちの書類に君がなる魔王のキャラデザと設定を記入してもらおうかな」


「は? キャ、キャラデザと設定?」


「うん。記入してもらえたら後はその設定通りにボクがちゃちゃっと君を生まれ変わらせちゃうから」



 え? それってつまり、来世の容姿や能力を自分の好きなように決められるってこと?


 うわ、どうしよ。それはちょっとテンション上がるぞ。

 ここは女の子にモテモテのバチクソイケメンに……いや、どうせなら美少女にもなってみたいな。


 いやいや、待てよ。



「あの、例えば『めちゃくちゃ頭がいい』って設定にしたらどうなるんですか?」


「ん? そりゃあ、めちゃくちゃ頭がよくなるよ?」


「じゃあ、えっと、仮にですよ? 任意で美少女になったりバチクソイケメンになったりできるって設定にしたらどうなります?」


「任意で美少女になったりバチクソイケメンになったりできるね」


「……つまり、どっちも楽しめるってことですか」


「……君、変わってるねぇ。まあ、だから選んだんだけど」



 僕は設定欄に性別を任意で変更可能と書き込み、その他にも設定を盛りに盛りまくった。

 設定厨だったし、こういうのを考えるのは本当に楽しい。


 キャラデザも男性バージョンと女性バージョンで二種類ずつ用意したので隙はない。


 こう見えても中学二年生の頃から中二病を拗らせて理想のオリキャラとか書いてネットに投稿したりしてたからね、絵は上手いんだ。



「わお、絵上手だね」


「まあ、それほどでもありますけど」


「ふむふむ。中二病が想像しそうな『ぼくがかんがえたさいきょうのまおう』って感じだね」



 鋭い。



「ま、面白そうだからオッケー。でも流石にこの設定通りに作っちゃうとゲームバランス壊れちゃうし、勇者陣営に与えるチートスキルも強力なものにしなくちゃだよねぇ」


「え?」


「じゃあね。あ、せっかくだから新しい名前で見送ろうか。――頑張ってね、魔王アイン」



 僕の意識はそこで途絶えた。


 こうして僕は異世界パルテシアで魔王に転生し、クラスメイトと殺し合いをすることになったのだ。







―――――――――――――――――――――

あとがき

キャラ設定公開

多分這い寄ってそうな混沌みたいなやつ。



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