Ultimate勇者
@MayoiAkatsuky
第1話 『転生しない方が楽しかった件!』
俺は鬼龍院ヤマト、どこにでもいるような17歳の高校二年生だ。
少しだけ思いやりがあるのか分からないが、道端で困ってるおばあさんに手を貸す程度のことしか取り柄はない。
『もし……異世界に行けたなら。』
そしてこんなバカげた幻想を今でも抱き続ける、ダメ男でもある。
異世界に行ったら、今度こそ実力で語れる男になるんだ。
酔っ払いのおっちゃんや迷子のおばちゃんを言葉巧みに誘導するような誰にでもできる事ではなく、異世界で敵をバサバサ倒して皆からキャーキャー言われるんだ!
「俺だって……異世界で冒険したいんだァ!!!」
「良いでしょう、アナタのその願い。
「え、だ……誰!?」
麗しい女性の声が突如部屋に響き渡り、俺はおもわず椅子から転がり落ちる。
急になんだ……今の声はどこから…………
カーペットのある床に体からダイブ、全身に激痛が走る。
──はずだったのだが。
「あ、あれ?」
気づいた時にはもう、燦燦と輝いていたまばゆい光が失われ緑の広大な大地へ足を踏み入れていた。
もしや……そう思い俺は無限に広がる空を眺める。
翼をバサリバサリと優雅に動かしながら、物凄い速度で西から東へと。
2個もある太陽の間を通り過ぎて行った…………
「この世界ってもしかして……」
「はい、異世界ですよ?ヤマト様。」
目の前に現れたホログラムから、先ほどの声の主。銀髪のかわいいお姉さんが出てきた。
この風貌、そして謎の様呼び。間違いない女神様だ。
「アナタ様は選ばれたのです、この地を救う勇者に。邪悪なる魔王が脅かそうとするこの世界を、解放する戦士に!」
「お、おおお!!!うおおおお!!!!!」
血流が活性化しキングコングのような雄叫びで喜びを現す俺!
俺の中の霞んだベールが、焼夷弾で燃やし尽くされたように消え去った。
俺も、俺も冒険ができる。村や街へ行き、強力なスキルや技を身に着け、ゆくゆくはカワイイエルフや魔女や獣人と…………むふふ!
頭の中に浮かんだ輝かしい未来、俺はくねくねとしながら女神に笑みを向けた。
「その様子ですと、受けてくれるようですね?この地を救う勇者の任に。」
「は~いもちろんですぅ~!やらせてください、魔王は俺が倒しますぅ~」
「それは良かった!……では、早速ですがアナタに祝福を与えましょう。」
そういうと女神様、画面の前で純白の白い光を放出し物凄いパワーを籠めだした。
「アナタには強い意志が見えます。それを最大限発揮できるように……『成長』の祝福を…………」
コレは……そうか!異世界転移の特典的なアレだな?
チート権能という今どき流行りのアレ、物凄い力でこの世界の猛者たちと張り合えるようになる救済措置だ。
「おおッ……めっちゃ強そう!こういう成長系のスキルが、一番冒険の実感あるんだよな~」
俺はワクワクしながら画面に映る女神様を見つめる。
さっきから少し、鼻がこそばゆいのかピクピクと動いている。
こういうお茶目なところもカワイイ、もしかしたら魔王を討伐した暁には……女神様とも進展が…………
そんな風に俺は、冒険の始まりを期待していた。
きっと素敵な世界が、出会いが、人生が!
「へ……ぶえっくしゅああああん!!!」
「くしゃみ!?」
女神のある行動で、めちゃめちゃになるのも知らずに!
『ズゴゴゴゴゴゴギューン!?!?』
我慢できずに漢らしいくしゃみを放った女神様、そのせいで手元が狂ったのか。
白い光が金色に輝き巨大に膨張した!
「あッ!まずいです、出力を強くしすぎて……ぶうぇっくしゅん!!!」
「え、ちょ……大丈夫すか?」
「朝の目玉焼きにコショウを振りすぎて……エッンンン!!!くしゅううううん!!!」
女神様は必死に力を弱めようとするが、物凄いくしゃみに出力は更に増してしまう。
金色は次第に赫、蒼、銀……終いには虹色へと変わる始末。
まるでソシャゲのガチャ演出のような展開に、冷や汗が出てきた。
「ちょっとでいいですからね?ホントに、ホントにちょっとの権能で十分ですから!」
「すびばぜん~……もう……抑え……きれないァックシュォォォン!!!」
「えェェェ!??」
鼻水と涙でぐじゅぐじゅになりながら、女神さまが写ったホログラムは爆発。直後虹色に輝く光が俺の全身を貫いた!
…………
……
…
「あれ?何も起こらない……」
天地創造とか、ブラックホールとか、炎熱系最強とか。
もっとそういうのが起こると思っていたが……良かった。直前で出力を元に戻せたんだな、安心。
まあ変な形で始まってしまったが、俺の冒険は始まった。
胸を張り、燃える意志を胸にする。
「さあ、行こうか。冒険の世界へ!」
希望に満ちた足並みで、俺は右足で歩みを進めた。
≪筋力増加≫
≪筋力増加≫
≪脚力上昇、及び肉体の最適化≫
≪スキル【俊敏】【スタミナ温存】【超速度】を獲得≫
え?
突如脳内に聞こえる謎の音声。
それと同時に脚に異変が生じる。
『メキッメキメキッ!』
ボディビルダーのように一瞬膨張した俺の細い右足は、瞬く間にギリシャ彫刻ほどの完璧な肉体美を造り出す。
俺は途端に先ほどの光景を思い出し、ぞわっと全身からヤバい汗が滲み出る。
≪【俊敏】【超速度】を獲得し条件達成。スキル合成、【
同時に祝福進化。モード【無限成長】へ移行します。≫
「え?あ?…………無限成長!?」
その瞬間、突如俺の体は等速直線運動を起こしとてつもない速度で平原を滑り始めた!
≪【
「え!?ドユコトォ!ドウユウコトォォォ!?!?」
そうして俺はジェット機のような轟音を響かせながら緑豊かな大地を疾走する羽目になった。
そして同時に気づいたのだ。
女神は、どうやらやらかしたんだと。
────始まりの街、グランツ。
「止まれ止まれェ!」
≪止まります。≫
急ブレーキがかかり、ビタっと止まった先は古き良き西洋の街。
まあまだ問題ないだろう。まずはギルドかなんかに登録して、討伐依頼でお金を稼ごう。
俺の力を証明するんだ!
意気揚々と進むため前を向く。
そして同時に、異変に気付いた。
「おうおうガキ!ここが盗賊団団長ロバルコ・ゲルニッソ様の縄張りだってことを知ってての……」
「ヒィヤメて!」
思わず振りかざしてしまった俺の手、まるでバグかのように団長は遠くへぶっ飛び気絶してしまった。
…………え?
『ドゴォォォ!』
衝撃の後に音が遅れてきた当たり、かなりの速度で飛んで行ったようだ。
俺は申し訳なさそうにこの驚異的な力を隠し、そろりそろりと退歩していく。
が、周りの町人は一瞬驚いたようだが、俺の好意に拍手で迎え徐々に近づき感謝を述べていた。
「こりゃ……まさか……勇者様じゃなか!」
「もんげぇなこりゃ、アイツはワシらからお金ばとって遊び惚けておったんじゃ。助かったわい!」
皆にこにこ笑顔で俺に手を合わせ南無南無と祈る。
どうやら……どの世界でもおじおば様からは逃げられないらしい。
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