村を滅ぼしたアンデッド達|異世界ファンタジー
岡山みこと
第1話 村を滅ぼしたアンデッド達(上)|ファンタジーショート小説
ガーラント国の北。
天を貫くような連峰の麓。
つい先日まで誰にも気づかれなかったダンジョンがある。
山の中腹の深い茂みの奥。
背をかがまねば入れないような低い岩の割れ目。
そんなダンジョンからモンスターが溢れ出した。
ゴーストやレイスといったアンデット系が近隣の村を襲う。
逃げ延びた数人の村人が街の冒険者ギルドに駆け込み助けを求めた。
村が襲われていると。
翌日先遣隊が送られたが、100名近くいた住民は誰もいなかった。
いや、動くことが出来ない赤子のみ取り残され、朽ちていた。
顔色は黒く、腐敗などではない。
アンデッドに生気を吸われた結果、ミイラの様に変わり果てた姿となっていた。
村に残された遺産をかき集めて報酬とし、特別クエストが組まれたのは数ヶ月経った頃であった。
理由は単純に、受注するパーティーがいなかったのだ。
「こんな物好きなクエストを受けるのは俺達くらいか」
アンデッドには物理攻撃の効果がない。
それ故に魔法使いや聖職者が適任なのだが、今回は村人が消えていた。
敵はおそらく死霊使い(ネクロマンサー)のスキルを持っている
つまり、村人はゾンビとなり襲ってくるだろう。
そうなると物理攻撃も重要になる。
全方面隙なく戦えるパーティーは少なく、大抵が何かしらに特化している。
それ故に物理も魔法も得意となると数が少なく、やたらと報酬が高い。
つまり、アンデッド案件に対応できるのは、有名パーティーか物好きかであった。
「数少ない僕達の得意分野ですもんね」
「アンデッドが得意なんて私は嫌よ」
パーティー名【墓暴きの旅団】。
アンデッド討伐を得意とする異質なパーティーだ。
メンバーは解呪師のノア、聖拳闘士のシオラ、汎用魔法使いのヴェスパーの3人だ。
「アンデッドクエストはめったに出ないからな」
リーダーである青年のノアは呪いやデバフを解除する専門職である。
厚手のローブを雑に着て、鋭い目つきをしている。
「だからこそライバルが少ないっていうのはわかるわよ」
物理アタッカーでありながら、拳に聖魔法をまとわせる女拳師のシオラ。
王国聖教の印が描かれた手甲をつけた青髪の妙齢の女性。
「僕は儲かるから嫌いじゃないですよ」
回復、バフ、照明、斥候、その他雑務、後方支援を担当する少女ヴェスパー。
幼さが強く残る、茶髪の少女。
彼等は対アンデッドに関しては、王国内でも高い評価を受けているB級冒険者だ。
3人が依頼を受けてダンジョンに潜ってはや2日。
入組んだ洞窟と時折現れるゴースト。
苦戦する訳では無いが、罠に気をつけながらの進軍は決して早いものではなかった。
今日も1日の行動を終え、保存食をもそもそ食べていた。
頭上にはヴェスパーの照明魔法がチラチラと光っている。
1人水を飲んでいた少女の手が止まった。
「ノアさん、ゴーストが来ます、数は1。距離200m」
ヴェスパーは常時弱目の索敵魔法を発動しているらしく、接近するモンスターにいち早く気がつく。
他の2人には真似の出来ない繊細なスキルだ。
「了解した、解呪(ディスペル)を使用する」
口内でボソボソと唱えられる呪文。
「距離100m……50m……20m。射程範囲です」
「解呪(ディスペル)」
洞窟の奥、曲がり角から顔を見せた人魂が空中で分解される。
低級霊ならば問答無用で即死させられる便利な魔法だ。
「おみごとです」
立ち上がり戦闘態勢だったシオラが座る。
「それじゃふたりとも、ご飯おわったら休んでください」
見張りはお任せくださいと、ヴェスパーがふんすとガッツポーズをとっている。
「6時間で起こしてくれ」
ノアが毛布に包まりごろんと横になる。
「よろしくねヴェスパー」
シオラも同様だ。
「ゆっくりしてくださいね」
ザックから聖水を取り出したヴェスパーが鍋に注いで火にかけた。
少しずつ蒸発しながら周囲を清める簡易的な結界だ。
地上ならば風に流されたりするが、こういった洞窟では極めて効果が高い。
懐中時計を出すと時刻は16時。
まだまだ夕方ではあるが洞窟では何も関係ない。
しばらく時間があるなと、クエストクリア時に提出する書類をまとめ始めた。
モンスターの種類、使用したアイテム、概略図など多岐にわたる。
書類作成専門のギルドがあるくらい面倒くさい。
こういった雑務もヴェスパーの仕事の一部なのだが、どうにも楽しくない。
こころなしか何時もより雑な字で書き進める。
ヴェスパーは報告書に、【生還者2名】そうハッキリと記した。
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