講談風「子ども向けの話とは」

小松たね

第1話

"「ペン!」や「パン!」は、講談師が釈台(しゃくだい)に張り扇(はりおうぎ)を打ち付ける音です。"



さて、皆さま。

ひかりとおと保育園では英才教育をやっておりました。


ペン!


その中の一人に歳の割に、たいそう、頭の回る”あおい”という男の子がいました。本人は自分のことを「あーちゃん」と呼んでおりました。

正式な名前が言えないんですね。



パン!


毎朝10時になりますと、その日の当番の園児が前に立ち、

3分ほど、お話をする決まりになっておりました。

3分間と言うのは短いようで長いです。長いようで短いです。



パン!


さて、あーちゃんの番になりました。

あーちゃんが選んだのは、経済のお話でありました。



ぺン!


あーちゃんがスピーチを始めましたところ、保育園児たちのまぶたの上下がくっつきそうになりました。その後、机に突っ伏して眠り始めたのです。



パン!



立って聞いていた先生たちでさえ、目が閉じそうになるのを必死にこらえておりました。



パン!



あーちゃんが話し終わる頃には、先生を含め、全員が熟睡に入っておりました。



ぺン!



あーちゃんが、大きな声で、「終わりました」と伝えると、みんなが一斉に目を覚ました。



パン!



その後の先生の批評であーちゃんは注意を受けました。



パン!



「あおいくん、次のお話のときには、もうちょっと子供向けの話にしてもらえますか」と。



パン!


あーちゃんの答えは、こうでした。「先生、これ子供向けなんだよ」



先生は次の言葉が出ませんでした。

では、大人向けの話をさせたらどうなっていたでしょうか?

空恐ろしささえ、感じさせます。

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講談風「子ども向けの話とは」 小松たね @marplecci

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