第5話 モブ、兄に丸投げする
クライ兄ちゃんに連れられてきたのは自分の家だった。アランと顔を合わせるのが気まずい俺は身構えながら歩を進める。
クライ兄ちゃんが向かったのは警戒していたアランの下でなく、母サフランの下だった。
「あら、クライとタイセイどうしたの?さっきお父さんと喧嘩してたみたいだけど。」
俺は何と言ったらいいか迷っているとクライが先に口を開いた。
「お母さん、タイセイがアザリアまでどうしても行きたいんだ。お願いします、行くのを認めてください。」
「そうね〜、でも外は危ないから。どうしてタイセイはアザリアに行きたいの?」
ここはどう答えた方が正解なのか、俺は考える。だが俺の頭では正解がわからない。仕方ない、正直に答えるか。
「母上、聞いてください。俺はこのままだと何者にもなれずに朽ち果てちゃうだろう。だから今から何者かになるために、まずは商人として身を立てたいんです。駄目でしょうか?」
アランと言ってる内容は一緒だが、オーステック家の裏の権力者である母には自然と言葉は丁寧になる。
ただ俺の言葉は母、サフランに響いてないのがわかる。ここは子供の夢を語る作戦から、修正が必要なようだ。
「本当は言いたくなかったんだけど、いつも優しい母さんに村で買えないような、ちゃんとしたプレゼントをしたいと思って。」
俺は少し目を伏せ、しゅんとする演技をする。ただ俺をずっと見てきた母の目は欺けなかった。
「タイセイ、演技は止めなさい。はぁ~、貴方は誰に似たのかしらね。分かったわ、お父さんの説得を手伝ってあげる。クライが引率するなら、お父さんも文句は言わないでしょ。」
「ありがとう、母さん!」
俺は満面の笑みを浮かべながら、ガッツポーズをする。
「それじゃあ、プレゼントを楽しみにしておくわね。」
母、強し!自分の言葉がブーメランで返ってきた。仕方ない、いつもお世話になっているから手間ではあるが受け入れよう。俺は少し引き攣った笑顔でその場を後にした。
母に頼んだ後の父の説得は早かった。最初は渋ってた父も、母の説得には弱かったようで何とか許可が降りた。
ただ条件が付き、アレンの同行が必須でアレンの言うことにしっかり従うこととのことだった。
俺はそれを二つ返事で受け入れ、アザリア行きが決まった。
時期は秋の鑑定の儀式に着いていくことになった。
この鑑定の儀式とは、7歳になった時の春か秋に行われるもので、7歳になるとこの世界ではギフトと呼ばれるスキルを得る。それを確認してもらう為の儀式となる。
大きい街では自分の街で儀式を受けれるのだが、小さい町には来ないので、近くの大きい街へ行く必要があるのだ。
なぜならスキルを鑑定できるのはBランク以上の鑑定スキル持ちとなるので、国に10もいない希少な人材となる。だからBランク以上の鑑定スキル持ちは1代限りの貴族となれるのだ。そんな貴族様の手間を減らす為、7歳になると大きい街へ集められ鑑定を行われるのだ。
この鑑定で優秀なスキルを得た子供は国や領主に目をつけられ、引き抜きを行われる。小さな町では優秀な人材を上の貴族等に奪われるリスクのあるものでもあるのだ。
俺も来年の秋に参加する儀式でもあるので、どんなギフトを得ることができるか楽しみでもある。
ただ、今はそんなことよりも初めてのアザリアが楽しみでしょうがない。
1月が経ち、旅立ちの日がやって来た。今回儀式に参加するのは2人、護衛が3人、それに俺とアレンが同乗する。馬車で行くのだが、中には越冬の為の資金調達用、高ランク魔物素材を詰め込んでいる。帰りは売り払ったお金で買った食料を乗せて帰るのだ。
馬車に揺られること2週間、旅に付きものの盗賊が出てくることもなく無事に着いてしまった。護衛のおっちゃん達の話では、人がほとんど通らないオーステックとの街道では実入りがないので盗賊はいないとのことだった。その代わり、魔物とは結構遭遇した。
儀式は3日後の為、それまでは素材を売り、食料調達を行う。俺はその期間で自分の予定をこなす予定だ。
とりあえず宿を確保した俺達はオーステック家行きつけという商会へと向かう。
商会に着き、俺は質の悪い取引を眺めている。
「そうですね、全てで金貨50枚でどうでしょうか?」
「おお、なかなかの値段だな。いいんじゃないか?」
「そうだな、金貨50枚もあれば税金も払えるし、冬を越すくらいの金にはなるな。いいんじゃないか?」
「ラルフのおっちゃん、いつもこれくらいの値段で買取してもらってるの?」
おっちゃん達が相談をしているが、取引内容を聞き、口を挟まずにはいられなかったので今回の責任者であるラルフへと口を挟む。
眉を寄せながら質問をする俺へと、ラルフのおっちゃんは至極当然のように肯定した。
今回の素材はAランクモンスターの毛皮等の素材が数匹分存在する。それとBランクモンスターの素材がそれなりにある。
俺のゲームでの知識によれば金貨80枚から金貨100枚位にはなるはずである。
「すみません、この金貨50枚は本当に適正な価格なんですか?」
「何だ坊主、文句があるのか?子供の躾くらい、しっかりしてもらわないと困るんですが。それで売るんですか、売らないんですか?私達は買わなくてもいいんですよ。」
店員の脅しにラルフが慌てて答えようとするのを俺は押し留める。
「それなら他をあたります。ありがとうございます。」
「タイセイの坊っちゃん、売れないとさすがに不味いんだぞ。すみません、子供の戯言です。」
「大丈夫だ、ラルフ。俺に任せろ。」
ラルフはどうして良いか、悩んでいたが横から助け舟が現れる。
「ラルフさん、1度タイセイに任せてみたらどうですか?」
助け舟を出したのは兄、クライだった。ラルフはクライの言うことならと悩むのをすぐに止め、売るのを保留してくれるようだ。
さすが兄ちゃんと思うべきか、俺の信用低すぎないと思うべきか、判断に迷う所である。しかし、思い通りにいったので結果オーライである。
そんな俺等を前に、梯子を外される形となった目の前の商人の態度が変わる。
「おい!今まで田舎者のお前達と取り引きしてやっていた恩を忘れたのか!どうせ他では相手にされないぞ。それでもいいのか!」
この商人の焦り様、やはりぼったくろうとしてたんだろうな。本当に適正な価格なら、余裕を持って帰すだろうからな。
商人の態度に自信を深めた俺はラルフを促し、店を出たのだった。
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