第4話 モブ、説得する

 時は来た、今日は父のアランから許可をもぎ取るぞ!


「お父様、大切なお話があります。」


 俺はいつもとは違う、貴族モードでアランへと声をかける。


「何だタイセイ、その話し方は気持ち悪いぞ。その話し方はどうせ何かのお願い事だろ。」


 さすが父親、しっかりとバレている。だがやることは変わらない。俺のとっておきの作戦を披露してやろう。


「お父様、僕街に行ってみたいんだ、いいでしょ。」


 俺はしっかり首を斜め45度に傾け、上目遣いでお願いする。作戦名は『かわいい息子のかわいいおねだり作戦』である。これに落ちない父親はいないだろ。


 作戦の効果はすぐに出たようで、アランはすぐに口を開く。俺は心の中で成功を確信しながら耳を傾ける、


「駄目に決まっているだろ。」


 そうそう駄目に決まっいる、、、って、なんでやねん。そこは、仕方ないないいだろう。だろ!いや、聞き間違いという可能性も微レ存ながらある。


「え、本当に駄目なの?」


「ああ、当然だろ。」


 この親父、かわいい息子のおねだりを簡単に却下しやがった。まあ俺の覚悟がしっかり伝わらなかったのが原因かもしれない。それなら次は俺の覚悟を伝えよう。


「父さん聞いて!磨かずとも光り輝く兄ちゃんならともかく、俺はこのままだと何者にもなれずに朽ち果てちゃう。だから俺は今から何者かになるために、まずは商人として身を立てたいんだ!」


「タイセイ、お前はまだ小さい。そんなに急ぐ必要はないんだぞ。」


 アランは焦る子供を諌めるよう、優しく促してくる。しかし、俺には目標がある。それを成し遂げる為には早すぎるなんて言葉はない。だから俺はその気持ちを必死に伝える。


「父さん、俺は死に急ぐくらい急がないと兄ちゃんのようにはなれないんだ。だから俺はいくらまだ小さいって言われても今から行動を起こしたいんだ!」


 ここまで俺の覚悟を伝えたら、本気度が伝わるだろう。俺はアランの目をじっと見つめて目を逸らさない。アランは考えながら、言葉を選ぶように口を開いた。


「タイセイ、難しい言葉をよく知っているな。お前の気持ちはわかった。でもまだタイセイは小さい、まだまだ急がなくても何にでもなれるさ。それにクライは特別だ。父ちゃんも小さい時はここまで凄くなかった。でも貴族になることができたんだ。だからタイセイはクライと比べる必要はないんだぞ。」


 アランの気休めの言葉に腹が立つ。兄ちゃんが凄いのは分かるが、その良い草は無いだろう。精神年齢が見た目相応になりつつある俺は、大人の対応などできず、怒りが抑えきれない。


「父ちゃんのバカ!ハゲろ!ていうか、寝てるときに髪の毛を毎日1本づつ抜いていくからな!覚えてろ!」


 断られた時の作戦を考えていなかった俺は打つ手がなくなったので怒ったことをアピールするため、薄くなってきた髪を気にしているアランへ、クリティカルヒットする捨て台詞を残して家から飛び出した。





 家には気まずくて帰れない俺は1人トボトボと秘密の場所へと向かう。まあ、秘密の場所と言っても村の見張り台なのだが。この時間は人がいないのを知っているから、この場所でボーと過ごす時がある。

 と、友達がいない訳じゃないからね!

 そう、ただ忙しいだけ、俺は自分に言い聞かせる。


 さあどうしよう、神算鬼謀の俺をしてもいいアイディアはそう簡単には思いつかない。俺は眺めの良い風景をボーと眺めていると、後ろから声をかけられる。


 この声は、後ろを振り向くと案の定、兄ちゃんがいた。


「兄ちゃん、、、。」


 俺は兄ちゃんになんて言ったらよいか分からず、言葉につまる。そんな俺へと兄ちゃんは優しい笑顔で質問をしてきた。


「タイセイにとって、今回のことは大事なことだったんだよね。たぶん、このために宝石採取もやっていたんだよね。違う?」


「そうだよ。でも父さんに断られた。だからどうしたらいいかを考え中。」


 俺の言葉に兄ちゃんは天使のような微笑みを浮かべ、口を開く。


「タイセイ、タイセイは自分のやりたいと思うことをやったらいい。もしタイセイの敵となるモノがいたらお兄ちゃんが剣となり振り払う。もしタイセイの邪魔になるモノがあったらお兄ちゃんが杖となり吹き飛ばす。だからタイセイはタイセイのやりたいと思うことを突き進めばいい。だからお兄ちゃんを頼っていいんだよ。」


 クライ兄ちゃんの言葉にジーンときた俺は涙目になる。こうなったら兄ちゃんにお願いして、ハゲアランをボコボコにして貰い、勝利を掴み取ろう。


「兄ちゃんお願いがある、俺の障害になっているあのハゲをボコボコにして!」


 クライ兄ちゃんは俺の言葉に苦笑いしながら窘める。


「タイセイ、お父さんをハゲなんて言ったら可哀想だよ。それに家族は傷つけないよ。だけどタイセイの願いを叶えるとっておきの方法があるよ。」


「兄ちゃん本当?」


「ああ、お兄ちゃんに任せて。」


 なんという頼りになる言葉、さすが完璧超人のクライ兄ちゃん、最高である。やっぱり持つべきものはハゲで分からず屋な父ではなく、頼りになる兄である。

 クライ兄ちゃんに頼んだら、全て解決する!


 俺はルンルン気分でクライ兄ちゃんに全てを任せることにした。

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