第66話 【日誌】ギルド長の記録2

 アイゼンが死んだ。予備調査員とはいえ、悲しき事実だ。彼の死を無駄にしないように、ミレットには頑張ってもらわなくては。予備調査員の人数にも限りがある。ここ数日、受付嬢から「新米冒険者が少ない」と報告があった。しかし、問題ない。王都へは「派遣要請」をしている。来週の「安らぎの村」で開催される「収穫祭」に向けて、賑わう必要がある。



 最近、仮面をつけた人物を見たという報告はない。村から出ていったのか潜伏しているのか。いずれにせよ、確証を得られるまでは情報収集に専念すべきであろう。速記官のアイルを使えば、情報収集も捗るだろう。あいつは、次期村長の息子。人脈は広い。あとは、現村長が消えるのを待つのみ。そうすれば、村は我がものになる。その日も、すぐにやって来るだろう。



【研究員のメモ】

外が少しずつ白み始めてきた。だが、私の手元にある「アイルのペン」は、私の意志とは無関係に、誰かの「野望」を書き連ねている。



【研究員のメモ:追記】

学生が私の耳元で囁いた。

「先生、次の村長は僕ですよ。先生は、その速記官として、僕の食事シーンを記録してくださいね」

彼の顔が、朝日を浴びて青く透き通っていく。私は悟った。私は歴史を解読する者ではなく、「新しい支配者」の誕生を代筆するだけの道具になったのだ。

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