第25話 【極秘】ギルド運営理事会・第113回議事録
これは、ギルド本部の地下金庫から発見された秘密文書の写しである。以下、可能な限り原文を維持した形で公開する。
【ギルド運営理事会 第113回議事録】
日付:王暦125年10月21日
担当:速記官アイル
ギルド長:
「みなのもの、よくぞ集まってくれた。アイルくん、速記を頼む」
アイル:
「かしこまりました」
ギルド長:
「議題はみなも分かっているだろう。ミレット調査員の言動がおかしい」
議員A:
「おかしいどころじゃないだろ。この前はヘイゴンに話を聞いたらしいじゃないか」
議員B:
「そう興奮するな」
議員A:
「それ以外にも問題がある。王都から来た女も何か探っている様子。あの女、4年前にも村に来た。やはり、あの時に消すべきだったんだ!」
ギルド長:
「……。みなに提案だ。しばらく、ミレット調査員の様子を見る。まだ、消すには早い。消すのは簡単だ。だが、どこまで把握しているか情報が欲しい。よいかな?」
議員B:
「賛成です。まだ、奴の動きには不明な点が多すぎる」
議員A:
「長がそこまで言うのなら、反対はいたしません」
ギルド長:
「欠席者には、直接、決定事項を伝えに行く。では、これを以て解散とする」
【速記官の私記】
解散後、ギルド長は議場に残られた。何かぶつぶつと言っており、聞き間違いでなければ、「ミレットだけは生かさなくては……」と。さっきまで「ミレット調査員を消すのは簡単だ」と言っていたのは何だったんだ? 来たばかりの自分には、さっぱり分からない。前任のワットさんなら、何か分かったかもしれないけど。
【研究員のメモ】
復元された「第113回議事録」の映像には、一点、極めて不可解なノイズが混入している。ギルド長が「ミレットだけは生かさなくては……」と呟くシーン。彼の背後に置かれた姿見の鏡に、撮影しているはずのない「現代の私」の風景が一瞬だけ映り込んでいるのだ。映像の中のギルド長は、鏡越しに、明らかにの私と目を合わせ、口角を吊り上げた。
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