第3話 【個人手記】調査員ミレットの記録1

 昨日はダンジョンに潜り、遺品を収集した。音録石の内容から推察するに、スライムに捕食されたと考えるのが妥当だと思う。ただ、一点気になるのが、私が現場に着く前に既に「安らぎの村」の村人たちが集まっていたこと。村長は「いつもギルドには世話になっている。これは村の伝統だから、掃除は自分たちでやるよ」と笑っていた。



 そして、気になるのが村長がはめていた指輪。ギルドの記録によると、サファイアの指輪はルナさんのものだ。それを、村長が持っていた。これは、何かがおかしい。でも、村長さんは、温かいスープを出してくれた。そんないい人がまさか……。



 明日以降も犠牲者は出るだろう。「安らぎの洞窟」での一連の失踪には何か裏があるはず。遺品の回収と同時に、真実を暴く手がかりを探さなくてはならない。問題は、「拠点村」のルールで、「安らぎの村」との接触に制限があること。つまり、あそこに近づくには、次の犠牲者が出なくてはならない。この矛盾をいかに解消するか。これも、今後の課題だろう。



※追記:今朝から、胃の奥に得体の知れない違和感がある。あのスープ、少し……泥のような匂いがした気がする。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る