男は卵で落とす

たたみや

第1話

「どーもー、あきでーす」

「あかねでーす」

「「あきあかねでーす、しゃーい!」」

「あかね、あたしは大切なことが分かったよ」

「大切なこと? 一体何が?」

「男を落とす方法!」

「すんごい自信だねえ! そんなんに情熱を注ぐ暇があるならお笑いに情熱を注いで欲しいもんだけど」

「それはズバリ、『男は卵で落とす』」

「なんじゃそりゃ?」

「卵の力があれば男なんてイチコロなんだから!」

「卵の力ってそんなにすごいかね?」

「そりゃあもう。ガチでエッグ……」

「ちょっと待って! それ以上はダメ」

「何で?」

「それあきが言っちゃいけないやつだから!」

「そうなのー? じゃあ男を落とす話ね。まずはー、卵料理を作ってあげること!」

「そうなのかな? 卵料理っていっぱいあるからさー、あきのおすすめって何?」

「それはズバリ、味玉!」

「どういうことよ?」

「味玉ってのはさ、ラーメン、チャーシュー丼などなどガッツリ系の料理に欠かせないものだし、それ単体でもお酒のあてとして優秀なの」

「そりゃそうだけどさ。味玉じゃなきゃいけない理由にならないじゃん」

「それにね、味玉には仕込みの時間がいるの」

「仕込みは燻製くんせい卵でも必要だと思うけど!」

「仕込みのできる女、すなわち『しこでき女』になる必要がある!」

「ちょっと待って! それ以上はダメ!」

「どうして?」

「何か危険な響きに聞こえてくるんだよね! だからこの話はここまで!」

「そっかー、あと卵料理と言えばあれね。ふわとろのオムライス!」

「良かったー。やっとあたしが予想してた卵料理がきたわー」

「今の私はフワトロ・バジーナ大尉だ。それ以上でもそれ以下でもない」

「何でノースリーブグラサンの大尉が出てくるのさ! ふわとろオムライスって簡単に言うけど、あきは作れるの?」

「そりゃあもう。あたしに任せてよね!」

「あれって確かさー、中が半熟のオムレツ作って、チキンライスの上にのっけて切るんだよね?」

「いいや、もっと簡単な方法があるよ」

「じゃああれ、スクランブルエッグみたいにしたのをそのままチキンライスに乗っける感じ?」

「違うよ。溶き卵を熱々にしたチキンライスにかけるんだよ」

「ちょっと待って! そんなんじゃできっこないから!」

「そんなことないよー」

「先にチキンライスが黒焦げになるって! あきの料理心配になってきたわー。他の方法はもうないの?」

「あるんだなー、これが!」

「何かその顔むかつくわー」

「そう、そして男は『Big egg』で落とす!」

「東京ドーム⁉ あたし東京ドームを『Big egg』って言う人見たことないんだけど!」

「東京ドームってさあ、イベントいっぱいあるじゃん! そういう所に一緒に行けばいいんだよー」

「すっごい投げやりだね」

「ライブ、好きなアーティストのライブとかいいんじゃない?」

「東京ドームだからね、大物に限られる気がするんだけど」

「あと巨人ファンの男は巨人戦に行ってあげればイチコロだし」

「偏見がひどすぎるから! 確かに自分の趣味に付き合ってくれる異性っていいなと思うけどさ」

「あー、そっかそっか。そうだよね、すっかり忘れてた」

「急にどうしたのさ?」

「日ハムも東京ドームが本拠地だったよね?」

「それ大分昔の話ね! 周回遅れもいいとこだよ。日ハムの本拠地って今エスコンフィールドHOKKAIDOだからね!」

「うーん、何だかおかしいなー」

「何がそんなにおかしいのさー」

「あかねが全く納得してくれない」

「そりゃそうでしょ! あきー、さっきから聞いてるけどグダグダ過ぎない?」

「そんなことないよー。ちゃーんと卵で男を落としてるんだからさ。あかねも自分の殻を破ったほうがいいよ」

「やかましいわ! そんなんだったら無理してアプローチしなくていいじゃん」

「どういうこと?」

「リードしてくれそうな男性を見つければいいじゃん!」

「そうだよね、あたしは可愛くしてればいいもんね! かわいいだけじゃダメですか?」

「それムカつくなあー! もういいや、どうもありがとねー☆」



 あきあかねの二人がネタを終え、会場は拍手と歓声に包まれた。

 不安もあったが、新ネタをやり切ることが出来たようだ。

「あきがネタに力を入れるようになってくれて良かったよ」

「そうだねー、フォトエッセイ出してて浮かれてたもんね。あたしたち」

「そりゃあんただけだっての!」

 こうしてあきあかねの二人は、再度ネタに力を入れることを誓ったのだった。

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