卵型小惑星

つとむュー

卵型小惑星

 20XX年、日本人によって卵型小惑星が発見された。

 長径約15㎝、天文台が発表した映像は世界に衝撃を与える。

 主成分は岩石らしいが表面はゴツゴツしているわけではなく、つるんとした正に卵だったから。


 きめの細かなマグマが宇宙空間で固まったのか?

 それなら球体になるのでは?

 地球に持ち帰って調査すべきでは?


 様々な憶測が飛び交う中、注目されたのがJAXAの動向だった。

 小惑星探査といえば『はやぶさ』。JAXAに統合される前のISASが打ち上げた『はやぶさ』、その後継機でJAXAが打ち上げた『はやぶさ2』は、いずれも小惑星からのサンプルリターンを成功させている。

 しかも今回のターゲットは長径約15㎝というお手軽サイズ。ミッションで一番難しい着陸を必要とせず、そのまま地球に持って帰ればよい。

 世論の高まりを受けてJAXAも『はやぶさ3』計画を発表した。しかし——


 小惑星をそのまま持って帰るのはまずいのでは?

 存在そのものが失われてしまうんだぞ?

 もし地球がそのまま宇宙人にお持ち帰りされたら問題だろ?


 計画を発表したとたん新たな問題が浮き彫りになる。

 そんな懸念を吹き飛ばしたのは、SNSで拡散されたある一人の少女の言葉だった。



「それって、ハヤブサじゃなくて、ダチョウなんじゃないですか?」



 そっか、その通りじゃないか。

 15㎝なのにハヤブサが行くから問題だったんだ。

 そうだよ、正にダチョウの卵だよ。


 日本中がハッとし、すべての違和感が払拭された瞬間だった。


 その後JAXAは探査機名を『だちょう』に変更。3年後のランデブーを目指して、種子島宇宙センターからH3ロケットで打ち上げられることになった。

 ちなみにその小惑星は、少女の言葉に因んで『ダチョウノタマゴ』と命名されている。

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