第25話 露見
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「だから、しゃあないやろう! 若が襲われそうになったんやから!」
真木組の真木という男はずんぐりむっくりとした体付きから葉巻をこぼしながら、どっかへ怒鳴っている。
「あぁ! 警察が来る? 上等や! まとめて、成敗したる!」
「真木ぃ! いい加減にしろ!」
隣にいる、結鶴が大学では見せたことの無い程の怒りを真木にぶつける。
ベイカー・鈴は真木商事と書かれた、新宿の某ビルにある、小さな会社にいるのだが、ここは明らかなヤクザの事務所だ。
えっ・・・・・・私、黒社会との繋がりなんて、囁かれたら、芸能界にいられなくなるじゃん!
鈴はそう思い、結鶴に帰りたい意思を伝えたが、当の本人は真木組の面々を怒鳴りつけ放題で鈴の話を聞いてくれない。
「すみません・・・・・・はい、はい、承知いたしました。すぐに対処します」
結鶴が真木からひったくった、スマートフォンを切ると「お前ら、警察行け。真木組は当面、解散だ」と言った。
「お勤めですかぁ・・・・・・若を守れてのお勤めならば本望ですわぁ」
「お前ら、本気で言っているのか? 大体、任務の最中なのにこんなドンパチを起こしたら、俺やベイカーにまで捜査の手が及ぶことを考えられない、お前らじゃないだろう?」
そう言うと、組員の面々が渋い顔をする。
「ですが、仮にあの場面で我々が救援に向かわなければ、若やその・・・・・・ベイカーさんも殺されていましたよ」
「俺一人で何とかなる」
「無理です。連中はプロです」
「警察を呼べばいい」
「警察なんか、ヤクザの関係者はみんな、死ねば良いと思っているのは若が一番知っているんじゃないですか?」
結鶴と宮崎と呼ばれる組員が口論を行うと「とにかく、お前らは警察へ自首しろ。残りの組員で真木組は続ける。柴田が社長代理を行うだろうな? 早く、行ってこい」と言った。
「若、せめて・・・・・・娑婆の空気を存分に吸わせていただきたいんですわぁ?」
「同感です」
「食事と女とタバコだけでもーー」
「早く、新宿署へ自首して来い! 俺とベイカーが逮捕されるだろう!」
そう言うと、真木たちは黙ってしまった。
「ベイカー、帰っていいぞ?」
えっ・・・・・・それは良いけど、あんなヤバい連中に襲撃された中で、一人で帰れ?
いや・・・・・・結鶴君がヤクザの関係者というか、もう、もはや構成員そのものであるという正体が露見した以上は付き合いを改めるのが普通だけど・・・・・・
「結鶴君、家まで送ってよ」
「何言っているんだ? 暴力団関係者との交友がバレたら、マズいんだろう? 一人で帰れ」
「あんな連中に襲撃されて、一人で帰れるワケないでしょう! デリカシー無いの!」
鈴がそう怒鳴ると「どいつもこいつもピーピーピーピーと・・・・・・家、どこだ?」とだけ言った。
「府中」
「遠いなぁ・・・・・・バイクで行くぞ。まだ、昼の二時ぐらいだから、渋滞は無い」
「分かった」
「一応聞くけど、俺との関係はこれっきりだぞ? ベイカーの為だ」
それを聞いた、鈴は一抹の寂しさを覚えたが、自分のキャリアの為にはしょうがないことだと割り切る事にした。
やっぱり、結鶴君のあの、知性と野性が絡んだ匂いはこういう環境から生まれたのか・・・・・・
「結鶴君に聞きたいんだけどさ?」
「何だ?」
「私を助けたことある?」
結鶴は暫しの沈黙の後に「あるな? 知ってどうする?」とだけ言った。
「分かった。行こう」
そう言って、二人は真木商事を出て行った。
続く。
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