第4話 見知らぬ森
突然のことに、皆、言葉も出ずに立ち止まった。私も。ただ、この光には見覚えあるな、と思った。そのときには周辺が薄い水色の光に包まれていた。
それが消えると、辺りは薄暗くなっていた。森の中ではあったが、間違いなく場所が違うとわかる。何しろ、生えている木の種類が全く違うのだ。さっきまでいた森は、広葉樹の森だった。が、今目の前に林立しているのは、ほぼ針葉樹だ。
「シホちゃん、さっきのって……」
マリちゃんが呟きながら私の傍に寄ってきた。私は顔をしかめながら言った。
「転移陣、だよね」
ゼンタとクロウもこちらにやってきた。
「あー、それかあ。でも、何で?俺たち、どこに飛ばされたんだ?」
それが問題だ。誰がなぜ転移門を私たち相手に使ったのか、という問題は後回しだ。
私は上方を見上げた。太陽の位置を確認できれば、方位が確認できるかなと思ったのだ。が、木々の枝に遮られ、空は見えない。昼間なのに森が暗すぎて、木々の影の向きで方向を見定めることもできない。
私は、口元を少しゆがめながら、木々の尖った葉っぱを軽く見つめていた。マリちゃんが心配そうに私に声を掛ける。
「シホちゃん、どうかした……?」
「いや、大したことじゃないんだけど。針葉樹の葉っぱって、掴んだら結構痛いんだよなあ、とか」
「まさか、シホちゃん……?」
さすが、マリちゃん。私のこと、よくわかってる。
私は、自分のリュックから手袋を取りだした。森に入って何か採集したくなったときのために荷物に入れていたものだ。
手袋は片方だけはめた。手袋をはめていない方の手をリュックに突っ込み、今度は手巾を取り出す。畳んでいたそれを少し振れば、さらさらと広がる。長さはちょうど襷くらいだ。
私は、手巾に魔素をまとわせながら、上に振り上げた。手巾の端を木の枝の先に絡ませると、思い切り引っ張り、反動をつけて飛び上がる。飛び上がった体が落ち始める前に手袋をしている方の手で近くの枝を掴み、一方の手で手巾をまた振り上げ、手巾に纏わせた魔素を木の枝に張り付けて反動をつけて飛び上がり、と繰り返しているうちに、森の上層に出た。魔素を木にまとわせて足場を作りながら、木のてっぺんに立った。
私は辺りを見回した。見渡す限り、針葉樹ばかりだった。森の端は山裾に繋がっていた。
私は山を見た。連なる山々のうちの二つが特徴的な形をしており、それを見てここがどこかわかってしまった。
私たちは、テッサ山脈を越えていた。方角を確認し、下に降りようとしたところで、固まった。木々の上を、体をうねらせながら悠々と飛ぶ大きな生き物がいた。蛇のように細長い体に銀色のたてがみ、大きな一つ目。言うまでもない、魔物だ。魔獣というべきか。
向こうと目が合ったのを私は察した。それと同時に、向こうが加速し、こちらに向かって飛んできた。
私は、下に降りることをやめ、木々の上を滑るように跳び始めた。
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