第1話 一家離散(ロスト・ザ・ファミリア)…プロローグ

プロローグ

お父さんが…自殺したって…


【…はぁ…え……】


それは突然だった。

2023年……3月下旬 午後四時三十九分


(左衛子の耳に入ったその訃報は音も立てずに私の幸福な世界を崩壊させる一因となる。)


左衛子は声にもなっていない程の小さき声を口にした。母は会社でOLを父は町医者として病院を経営している。そして先程その仕事から母が帰宅した。どうやら今日は取引先から直帰した為何時もより早い帰宅だった。その母より先に帰宅していた私はテレビのある。談話室で一人テレビを見ていた。扉を開ける音がする。そこには母がいた。


母は満面の笑みで一言


【ただいま!】


聞き慣れた言葉なのにその言葉が凄く心に響いた気がした。

左衛子は無意識におかえりと口にしていた。母はいつも穏やかであまり感情を

表に出す人ではないだからか母がこう言う風に感情を出すのが嬉しかった当たり前を

受け入れるのでは無くその当たり前すら新鮮に感じられるのは幸せだ。

そして母は自室に行って着替えようとすると電話が一つ掛かって来た。

母は着替えもせずに掛かって来た電話に出るすると血相を変えて事のあらましを私の

目の前で口頭で早口になり涙を流し説明するが言っている自分自身も何を言っているのか

理解していないと言うかいやっ理解したくないと言った感じが表情からひしひしと

伝わって来る。


【今ね…おっお父さんが近くの公園で首を吊っているのが発見されたって…警察から

    電話がね…鞄の中にあった名刺から家に電話して来たらしいわ…でも

              多分何かの間違いよね…たっ他人の空似よ…ねきっと】


と母は現実逃避に必死になり周りが見えていない様子だった。

それはいつもの穏やかな母からは想像出来ないほどに表情に表れている。

だがそれも仕方ない左衛子自身も同じ気持ちだ。

それから数分後に小学一年生の義妹 美和子が帰宅して来た。彼女は至って冷静だった。

父の訃報を聞くまでは…父の訃報を聞くと血相を変えて慌てていた。兎にも角にも実際に

行って見ない事には分からない…三人で父の自殺したと言う現場の公園に行くと公園には

人集りが出来ていた。ドラマなどで見るサーカスが街に来た時の様に物珍しそうに凝視し

皆各々興味深そうに見ている。中には携帯でその様子を録画する物もいた。正直言って

不謹慎極まり無かった…左衛子はこれまであまり感情を荒げる事はなかった気はした。

良くドラマで見るが第三者なら気にも留めないが実際に当事者の親族になって初めて

不快感を覚える物なのだと感じる。中に入ろうとする野次馬もおり刑事に止められている。殺人事件なら分かるが自殺でこんな人だかりができる物なのだろうか…と

左衛子は首を捻る。そしてその様子を一瞥して

一旦無視し行列の中を脇目も振らずに飛び出したそして木のある方に向かうとそこには

刑事が数人ほどいた。中心にいた大柄で強面で獅子の如き立髪で獣の群れを率いてると

言われても説得力しかない威圧感のある刑事の長らしき男性が声を掛けて来た。


【こちらの仏さん、前渡哲之さんの親族の方ですね…私は

        警視庁刑事部捜査一課の警部をしています。溝呂木公平と申します。】


(なんとまさか捜査一課と言えば警察の本山じゃないか!

                 しかも殺人担当の刑事まさか…私達を疑っているのか)


左衛子は心の中で疑われているのではと言う不信感を抱いた。

溝呂木と言う警部さんは自己紹介した後右衛子もまた自己紹介をする。

母 前渡右衛子と私 前渡左衛子そして妹 瀬戸美和子の三人を紹介する。そして刑事は

それから父の名を告げ確認してくれと告げブルーシートを開いて死体の顔を私達に見せる。公園の人々はその光景に固唾を飲んで見守っているようだ。

相も変わらず写真を撮ってる輩もいる。そして溝呂木は母に父かどうかを確かめさせる。

その死体の首には生々しい縄の後かなり強く絞めたのだろう…顔が青紫色に変色している。私はそれを見て気分が悪くなった。

警部のその言葉に口語する様に母も重い口を開けて喋り始める。


【はっはい間違いありません……主人です。でも何故…何故主人が…】


母はその死体が父である事を警察に告げてから何故父が自殺したのかと嘆き悲しんでいる。それは左衛子も疑問に感じた。

父の会社は別に何か経営不信になっていた訳でも無いし、

父も病んでいる素振りは無かったしリストラにもあったなんて言って無かった。

父と母も別に特段何か仲が悪くなる様な事があった訳でも無い…

自殺する理由に点で心当たりなど無かった。そうしていると溝呂木は私が疑っている風に

見ている事に察したのか…左衛子達に謝罪してくる


【申し訳ない…別にあなた方を疑っている訳ではありませんので…そう睨まずに】


私は(コイツ目前で言うとか度胸凄いな)


と感じながらも母は気を遣わせた事に対して慌てて逆に謝っている。

そしてその後、父の死については不審な点はあれど自殺として片付けられた。

それからは母は仕事を頑張り続けたが…

それにより体を壊してしまった病気で寝たきりになった。無理が祟った様だ。

そうして左衛子達は家を売り払い父の弟私達から見て叔父さん宅に厄介になる事になった。(叔父さん夫婦は別に拒否するでもなく素直に受け入れてくれた。)

それが左衛子達には有り難かった。それからは第二の我が家での生活が始まったのだが…

(私はその後…叔父さん達とも上手く付き合って頑張っていた。)

左衛子は実際は父が亡くなった事より生活が一変するのではないかと言う事の方が

実際は心配だった。だが生活は大きくは変わらず私は安堵と同時に大きな罪悪感が身体中を渦巻いていた。父に対する事もそうだが叔父さん達に迷惑を掛けていると言う事その物が

また大きな罪悪感の種になっていた。だからかそれからはこれまではバイトを

放課後になってやっていたが今は…学校を勝手に休んでバイトをする様になっていた。
























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