H・ERO〜異世界転生しても俺は童貞を陽奈ちゃんに捧げたい!〜
@milkil1219
第1話
「陽奈ちゃん...いい?」
高校2年生江口広、身長175センチ、体重は60キロ、出席番号は19(イクッ!)
お父さん、お母さん、母方のおじいちゃん、母方のおばあちゃん、死んじゃった父方のおじいちゃん、ご存命の父方のおばあちゃん。俺、ついに童貞を捨てる時が来ました。
ここまで、それなりに悲しいことや辛いこともあったけど、俺は今日この日を迎えられてとても幸せな気持ちです。
初めてドラッグストアでゴムを買った時、小銭を出す手が震えてしまいました。大人になることへの重圧と、子供を作る行為に対する責任感を感じたんです。これが大人になることなのかと思いました。
お相手である陽奈ちゃんは、いつも明るくて、かわいくて、こんな俺でも笑って受け入れてくれるいい人です。人として尊敬できるところも、揉める部分も多いし最高の彼女です。
そんな彼女が今、裸になって優しく俺に微笑んでいます。
「きて...ヒロくん......」
みんな、俺もう行かなくちゃいけないみたい。
「挿れるよ」
震えそうになるのを抑えてしっかりと挨拶をする。細い彼女の腰を掴み、ゆっくりと自分のポコチンを近づける。
もう少し、後もう少しで俺はついに童貞を卒業するんだ。そう思うほどに心臓は激しく高鳴っていく。
息は荒くなり、じんわりと額とポコチンに汗をかく。先っちょが細かく揺れるのが見えている。陽奈ちゃんにはこの緊張がどうかバレないで欲しい。
モザイク越しでしか見たことがなかった夢の頂き。前戯の時も服の中から薄らと見えてはいたが、しっかりと目にした今、俺の心臓は過去最高の運動量をマークした。
緊張で目の前が真っ白になる。間違って自ら顔射したのではないかと思うほどに、世界は白みがかっていた。
「うっっっ!!!!」
極度の緊張の中、俺は覚悟を決めて、人生最初の腰振りをした。
生きている感覚が遠のいていく。これが果てるということか。ああ、三擦りもいかなかったな。
こうして、深い後悔と共に俺はそのまま意識を失ってしまった。
目を覚ますと俺は真っ白な何もない空間に寝そべっていた。困惑しながらも重たい体を起こし、焦点の合わない視界の中で陽奈ちゃんを探した。
「陽奈ちゃん!どこ!!」
ここがどこなのかもわからないが、とにかく陽奈ちゃんを探す。すると、聞きなれない女性の笑い声がどこからか聞こえてきた。
「君もう死んでるよ。陽奈ちゃんはここにはいないから」
意味がわからない。俺が、死んだ?
「いやー、まさかあんな死に方するとはね。めちゃくちゃ面白かったよ、君の死に様」
悪魔みたいなことをケタケタと笑いながら言う女は、いつのまにか俺の目の前にいた。
「陽奈ちゃんびっくりしてたじゃん、君が死んじゃったから」
え、俺死んだの?陽奈ちゃんの前で??しかも腹上死???
驚きで声も出せないままでいる。女はずっと笑っていた。
「あー、おもしろい。こんな死に方久しぶりに見たな。ありがとね」
女は俺に手を差し伸べ、握手を求める。意味がわからないまま、俺は女と握手をした。
「あなたは一体、誰なんですか?ここはどこなんですか?」
「私は神様で、ここは死んだ人が次の転送先を決めるための案内所」
彼女な説明を聞きながら、情けない死に方をした後悔と、陽奈ちゃんに会えないという絶望に胸がいっぱいになった。
「えーと、次生まれ変わるならどこがいい?やっぱ人間だよね!やっぱ若い子なら魔法とか好きそうだし、この世界にしようかな。せっかく童貞で死んだんだしね」
「え?」
「どうした?魔法ある世界しらなかった??」
「いや、今童貞って」
「そうだよ、君童貞のまま死んじゃったんだよ」
意識が遠のいていく。死んだまま死ぬことができそうだ。
「君、ギリギリ挿入できてないね。ゴムの先っぽがちょっと当たってたみたいだけど」
気怠い体からさらに力が抜けた。陽奈ちゃんとえっちできずに死んでしまったなんて、なんという不幸だろうか。
「でも、ラッキーじゃん。童貞のまま死んだら魔法使いになれるんだからさ」
情報を咀嚼できないままでいる俺に、神様は考える時間を与えてくれない。童貞のまま死んだら魔法使いになれる?童貞ってなんだっけ?童貞って死んでからもいじられるものなのか。
「不幸中の幸いってやつだね!いろいろ悲しいだろけど、次の人生は私がいろいろ融通効かせてあげるから楽しんできなよ」
次の人生?陽奈ちゃんがいない人生なんて意味ないよ。
「そんなのどうでもいいんで、陽奈ちゃんに会わせてください」
「あ、ごめん。もう転送の準備できちゃった」
「は??」
陽奈ちゃんに会えなくなる悲しみと怒りで狂いそうになる。
「おい!どうにかして元の世界に戻せよ!!神様だろ!!」
「えー、あと3秒じゃ無理だよ」
「くそが!」
「あっ、次の世界を平和にしてきたらいけるかも!流石に何もしてない人には特別扱いできないからね。とにかく頑張って!」
いい加減な神様の、適当な言葉を最後に俺はまた意識を失い倒れた。
「にいちゃん、大丈夫か?」
大きく体を揺さぶられて、俺は再び目を覚ました。野太い声をした、戦士の格好をした大男が俺を抱き寄せる。
「水でも飲みな」
男は俺にゆっくりと水を飲ませてくれた。男の腕の中で辺りを見渡すとそこは、絵に描いたような中世ヨーロッパの世界が広がっていた。
「にいちゃん、名前言えるか?」
「江口広です...」
「和名ってことは、転生者か。わかった、すぐ医者のとこ連れてってやるからな」
和名、転生者。この二つの単語を聞いた時、違和感と親しみが同時に押し寄せてきた。その違和感を感じつつも男に身を委ねる。
男は俺を抱き抱えてそのまま走って医者の元へ連れて行ってくれた。
市街地を駆け抜ける道中、様々なものを見た。活気あふれる屋台に、呼び込みをする売り子。その辺で普通に武器やら防具やらも売っている。その景色を見た時にやっと自分がどこにいるのかがはっきりとわかった。
「異世界だ...」
思わず口にしてしまった。それを聞いた男は、ガハガハと笑って、やっぱりなと言った。男によると転生者は一年に数人現れるらしく、俺らが考えているよりも、珍しくないらしい。
「どうだ?転生できて嬉しいか??魔法だってあるぞ」
「いや、まあ。はい」
男は何故か自慢げだった。男の名はクリスと言うらしい。友人の叔父が転生者だったらしく、彼は転生者のことには理解があった。
「江口もこれから大変だな。俺のこと頼ってもいいんだからな」
「ありがとうございます」
そんなこんなで、街の一角にある診療所についた。古い洋風の建物の中にベッドが4つあるだけの簡易的な診療所だった。
「先生、こいつは転送者です。多分、転送後の症状が出てる感じかと」
「なるほど...」
医者と思わしき人はクリスに指示をして俺をベッドに寝かせ、胸に手をかざした。すると、彼の手から暖かな緑色をした光が溢れた。
「なんですか、これは」
俺がそう言うと、医者はクリスと目を合わせてニヤニヤとし出し、治療魔法だよと答えてくれた。
もうこれ以上は魔法に勃起(はんのう)するのはやめようかな。この二人のこの感じ微妙に腹立つし、魔法なんかどんなもんじゃい。
彼の治療魔法をかけてもらい、俺は一人で立てるくらいには体力を回復することができた。
「ありがとうございます」
「礼なんかいらないよ。私はこの町で医者をやっているラムダだ。転生後で疲れているだろうけど、とりあえずこれ読んで」
ラムダは俺に一枚の紙を渡した。そこには転生者専用マニュアルと記載されている。
「それはね、転生者用の説明書なんだ。ずっと昔に来た転生者たちが、後に来た人たちのために作ったのさ。感謝して読みな」
ラムダはそう言って奥の方に消えていった。クリスはというと、転生したばかりの俺を気遣ってずっと横にいてくれている。
ラムダの指示の通り、説明書に目を通す。しっかりと腰を据えて読んでみると、読み終わるのに30秒程度しかからなかった。恐ろしいくらいに何も書いていない。なんだこれは、説明書かほんとに?
この世界には魔法があること、その魔法は喜怒哀楽の4つの感情を元に作り出されること、困ったらギルドにいって仕事をもらってくること、先代の転生者たちが言葉を教えたため基本日本語でオッケーなこと、この4つが書かれているだけだった。
「あの、これだけですか?」
「そうだが、何かわからないことでもあるか?」
クリスは大層不思議そうに答えた。これ以上何を求めるのだと言うように。
俺も分かっていないものが分からない状態だったので、何も言わなかった。
その後、ラムダから俺はもう動いてもいいとの診断を受け、ひとまずはクリスの家に連れていってもらうことになった。
いつのまにか外は暗くなっていた。クリスの後ろについて街を歩く。俺の倍はある体で力強く歩くその姿に圧倒されながらも、置いていかれないように小走りになったりした。
彼の顔はいかにもな戦士顔で、鼻が大きいのが特徴だ。絶対に巨チンに違いない。俺は頭の中でクリスにおちんぽバトルを仕掛けたが、大差で負けてしまった。しっかりと白液を飛ばして敗北を宣言する。
そんなくだらない妄想をしていると目的地であるクリスの家に着床した。
「とりあえず、今日は疲れてるだろうから、飯食って寝るぞ」
「色々ありがとうございます。クリスさん」
「気にすんな。あと、クリスでいいぞ」
「クリス、ガチ感謝」
「調子に乗れとは一言も言ってないぞ」
冗談が通じるタイプでよかった。そのまま彼はガハガハと笑いながら、家の中を案内してくれた。
この家はクリスの両親から引き継いだもので、クリスはここで一人で暮らしているらしい。部屋は2つほど空きがあり、リビングも一人で住むには広すぎるくらいだったので、ちょうどよかったと彼は言った。
「服はある程度サイズわかったから俺が後で買ってきてやるよ」
「見ただけで分かるもんなんですか?」
「俺くらいの戦士になるとわかるな。相手のリーチとか目測できないと戦いにならない」
てことは、女の子のバストとかも正確に分かるのか。くそ、けしからん奴め。
「とにかく飯だ。準備するからちょっと待っとけ」
そう言うとクリスは台所に立ち、夕飯の準備をしてくれた。
「ファイア!」
気合いの入った呪文が台所から聞こえてきたが、俺はあまり勃起(はんのう)しなかった。クリスはドヤ顔でこちらを見ている。
彼は俺の予想外のマグロ具合に動揺したのか、顔を赤くして少し照れている。
「もう魔法には慣れたのか?」
「クリスのドヤ顔に慣れてないだけです」
「生意気なやつだなー」
そうこうしていると、クリスは大皿に料理を乗せて、テーブルまで持ってきてくれた。
「じゃじゃーん、クリス特製チャーハンです」
「チャーハン!?」
まさかここでチャーハンがいただけるとは。確かに、日本語も通じるし、歴代の転生者たちがレシピを伝えていてもおかしくはない。ただ、異世界飯が食えると思っていたので、ありがたさを感じつつも、少し残念に思ってしまった。
「なんだ、チャーハン嫌いか?」
「いや、好きですけど」
「だろ?これお前んとこの料理だもんな。遠慮せずたくさん食えよ」
予想以上にクリス特製のチャーハンは具沢山でとても美味しかった。大雑把そうな見た目に反して彼の味付けは繊細で、食事のマナーも背筋をピンと正してしっかりとしていた。
「お前、転生者なのにいただきますしないんだな」
食器を片付けながらクリスは真っ直ぐな目をして俺に聞いてきた。
俺は膝から崩れ落ちそうになった。異世界の住人に食事のマナーを指摘されるとは流石に思わなかったのだ。
「いや、クリスはしないだろうからあれかなと思って」
なんとかそれらしい言い訳をしたが、日本人としてのプライドと江口家の名を汚した気がしてならなかった。
今度からは毎回いただきますをしよう。食材の命は重いからね。これ大事。命。
「シャワー先浴びて来い。着替えはすぐ用意しといてやるから」
なぜか、クリスのシャワー先浴びて来いという発言に少しだけ興奮してしまったが、男根には興味がないので俺の中の女の子をすぐにしまった。
シャワーを浴びながら今日1日を振り返る。とても濃い一日だった気がする。現実の俺はもう死んでいるんだよな。そう思うと怖くなった。
不安を拭おうとひたすら無になる。シャワーが体に打ちつける音に集中して、頭の中を清めた。
「着替えここに置いとくぞ」
「ありがとうございます」
体をタオルで拭い、ドアの外に置いてある服に着替えた。クラスの用意してくれた服は、異世界らしい民族衣装のようなものだった。
「サイズはあってるか?」
「ええ、ピッタリです。流石ですね」
「まあな。空いてる部屋どっちでもいいから使っていいぞ。今日はもう寝て明日に備えろ。明日はギルドに行くぞ」
そう言うと彼は、シャワーを浴びに行った。俺はクリスの用意してくれた部屋に行き、そのままベッドに直行した。
普段ならこの時間は一人の夜のお楽しみタイムがあるところだが、疲労がものすごいため、すぐに寝てしまった。
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