【夢の中】で女を犯しまくっていたら、【現実】に影響でちゃった……。

BIBI

第1話 妹に彼氏ができたらしい……。



 俺は深刻な鬱病の原因が――ナイトメアだと知っている。



 ナイトメアは僕が名付けた化け物達の総称。奴らが居るだけで、人は鬱病やパニック障害を引き起こす。そして寿命まで短くなってしまうらしい。




 俺は夢の中で黒い化け物――ナイトメアを倒す事で、鬱病から自力で脱した。だからこそ分かる、知っている、このナイトメアの恐ろしさを。




 コイツが居ないだけで気分よく毎日を過ごせるし、大抵の事なら気軽に許せた。だけど逆に、夢の中にナイトメアが増えると、些細な事でも大きなストレスを感じてしまう。




 だから――。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 リビングに行き、キッチンに入る。コップを手に取り水道水を注ぐ。すると――。



「兄さん、何か最近変わったよね」



 冷たい目で黒髪を腰まで伸ばした妹――ミウが隣の俺を見た。俺に似た顔立ちで非常に整っているが、相変わらず目つきが悪くて仏頂面。



 見るからに気が強そうで、実際に気が強い。ドラマや映画で出てくる様な、可愛いお兄ちゃん大好き、みたいな妹ではない。



「まぁな。自分でも驚くほど気分が良い」



 一ヵ月前まで夢の中にナイトメアがき過ぎて、何となく気分が悪かったもんな。自然と表情や態度も暗くなっていて、あの時は母さんが凄く心配かけてしまった……。反省しねぇと……。




「まだ筋トレを再開してるみたいだし、もしかして……、また――」



 ミウがほんの少しだけ嬉しそうな、期待してそうな目をした。だが俺は遮り、「いや。もうバスケはやらねぇよ」と目を逸らし、少し申し訳なく思う。



「…………そう」



 目を合わせなくても、ミウが何となく落胆したのが伝わった。静かに俺の前からいなくなり、部屋に戻って行った様子。




 昔はわりと軽口叩き合いながらも仲良かったんだけどな……。




 やっぱり、俺が二年前、中学時代にバスケを辞めたからだよな……。勉強も運動も出来たあの頃の兄はもういない。そういう落胆されちまったか……。




 でも、しゃーねーよな。つまんなくなっちまったんだよ、勉強もバスケも。昔はそれなりに楽しかったけど、もうやる気起きねぇ。




 それに昔は結構背が高い方だったのに……、今は平均より少し高い程度。何かあまり伸びなかったしな。ナイトメアの影響なのか知らんけど。



「寝るか……」



 一人呟き、肩を落とした。



 食後は一緒にリビングで映画を観る事も多かったけど、今は俺と顔を合わせたくないのか、すぐ部屋に戻っちまう……。



 何か、ちょっと寂しいな。



 そう懐かしい記憶を思い出しつつ、俺は部屋の電気を消し、寝る準備を始めた。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 部屋の電気は消している。明かりはベッドの隣に設置したランプの、暖色系の光だけ。



「…………」


 ただ目を閉じ、俺は大きなベッドで寝ている。



 ふと考えるのは妹の事だった。



 昔は可愛かった妹だが、今は面影が殆どない。



 俺の所為なのは分かるけど……。でも……、冷たい態度は傷つくなぁ……。別に俺がアイツに迷惑を掛けた訳でもねぇのに……。何で俺ばかり……。



 昔は結構可愛い奴だったのに、今は……。



 そういやアイツ、最近は彼氏ができたとか母さんに言ってた様な……。もしかして、そういう事もしてんのかな……。




 そう思うだけで、少しムクムクと反り立つ気配を感じる。血の繋がった実の妹ではあっても、顔はかなり良い。めちゃくちゃ良い。



 同級生のガキに初めてやっちまったのかなぁ……――。




「…………え?」



 目を開けると、隣に気配を感じる。薄らと見えるのは、妹の顔だった。枕が無くて寝心地が悪そうだが、スヤスヤと俺の隣で眠っている。



 何で……、こんな所に……。



 動揺しつつ、確認する部屋のドアを。



 やっぱり……。



 視線の先にあるのは、いつも目にする現実のドアではない。見るからに頑丈そうで、内装に不似合いな鉄扉てっぴである。




 ミウを起こさない様にベッドを出て、鉄扉てっぴのつまみの握り引っ張る――が、全くビクともしない。




 何だコレ……、いつもなら簡単に開くのに……。それに、何で俺の夢の中に、ミウが居るんだ?



 まさか寝る前に意識した相手を、夢に招いてしまう……、とか?




 嘘だろ……。そんな事が……。



 自分でも意外なほど、俺は冷静に状況を考えながらベッドに戻る。




 とりあえずミウを起こして事情を――。



 聞こうと思ったが、手が止まる。脳裏をぎってしまった――いや、魔が差したと言うべきだろうか。



 布団がはだけ、胸の小さな膨らみが寝間着越しでも見て取れる。ミウは痩せ型で身長はやや低く、少し発育が悪い感じだけど、わりと尻だけは大きい。



 こんな状況で……、何もしないなんて勿体ないんじゃ……。



 いや……。駄目だ……。妹に手を出すなんて、兄貴失格だろ……。そんな事絶対に許されないし……。でも、ここって夢、だよな? 現実で手を出す訳じゃねぇんだし……。




 でも……。いや、どうなんだ……? 仮に此処でレイプしたとして、どうやってミウはそれを証明するんだ?



 夢の中で自由に行動できる力。他人を自分の夢に招き入れる力。そんなファンタジー過ぎる力なんて聞いた事ない。これは俺だけの力なんだ。




 だったら、ここで何をやっても、起きた時に俺はしらばっくれたらいい。何言われても知らない顔してれば、ミウが見た悪夢だったと乗り切れるはずだ。



 何せヤッた形跡自体が現実にねぇんだから。



「だけど……」



 手を伸ばそうとする右手を、左手で止めた。息が荒くなる。まだ触ってないが、胸の膨らみを、ただ見ているだけでうずうずしてくる。




 無防備に寝ている妹の口に、舌を突っ込みたくなる。



 だけど駄目だろ……! 妹だろ、ミウは……! 俺が変な事したら駄目だ……!




『私、昨日彼氏できたんだよねぇ。初めてできたし、付き合うって何すればいいんだろ』




 何となく夕飯食いながら言っていた、妹の発言を思い出してしまった。その時、俺の中で何かがプツリと切れた気がした。




 あの発言は確か……、二週間前くらいだったよな……。だったら……。まだ何もしてない可能性も、なくは、ない……、よな……?



 だったら、初めては……、俺が――。



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