第2話

全国大会に行けました!って聞いたり見たりすると、みんなこう言うんだよね。

「すごいじゃん!努力の賜物だね!」

「流石新道中学校!努力の女子バスケもやるじゃーん」

「そんなに強いとは思ってなかった。努力を舐めてた。」

……いや、努力?もちろんしたよ。でも、それだけじゃない。

強くなるって、簡単じゃないんだよ。

技術でも体力でもない。

一番大事なのは――人間関係。

バスケって、チームスポーツでしょ?

だから、パス一つで空気が変わると私は思っている。

「なんで今、私に出さないの?」とか、「こっちじゃなくてあっちに渡したほうがいいでしょ?」とか、「シュートくらい入れてよ!」って顔をされたら、もう終わり。

勝つために必要なのは、ヨコとタテの繋がり。

人間関係のバランスだ。

崩れたら、どんな戦術も意味がない。

……先にこういうことを知っていれば良かったのにと思ってる。


新道中学校女子バスケ部。

一年前まで、地区大会一回戦負けの常連で、『新しい道はショボイ』とかディスられるくらいだった。

それが今じゃ、県大会ベスト4。

全国大会の切符をかけた試合まで行けるなんて、誰が想像した?って感じだよね。

「奇跡だよね」って言われるけど、奇跡じゃない。漢字にもよるか。

では何故ここまで来れたのか?

顧問の菜瀬田先生が本気になったから。

部長の真希音さんが、チームをまとめたから。

そして、我ながら私が、裏で地味に動いたから。

……いや、動かされたって言った方が正しいかも。

まぁいろんなことがあって、クラスでも「よっ副部長っ」と謎の盛り上がりが始まる時も少なくはなかった。

2年生で副部長。この肩書きが重かった。

でも、正直、肩書きより重かったのは――人間関係の調整。

三年生はなかなか私に心を開いてくれないし、二年生の不満が爆発しほぼマンツーマンの面談状態の時もあり、一年生はシンプルにやる気を引き出す。

「副部長って、便利屋だよね」って。

「うわーいま私使われてんな」って。

何度思ったことか。


行くぞ!全国大会改革は、菜瀬田先生の一言から始まった。

「今年は絶対に勝つぞ」

定年退職が近いから最後に結果を残したい――そんな理由だったと思う。

でも、その言葉で空気が変わった。

練習メニューは地獄みたいに厳しくなった。

走る、走る、走る。

「体力は裏切らない」って菜瀬田先生は言うけど、私は思ってた。

「裏切るのは人間関係だよ」って。

真希音さんは、部長として完璧だった。

明るくて、誰にでも公平で、でも芯が強い。

本当に尊敬できる人だった。

周りで「前髪は女子の命!」とか「メイクが崩れるぅぅぅ」とか叫んでる先輩と比べたら比にもならないくらいだ。

そのおかげで、三年生の不満もなんとか収まったことはないがなんとかはなった。

その時も、私は裏で動いた。

「副部長って、調整役だよね」

そう言いながら、笑ってたけど、内心は泣きそうだった。

でも、その努力が、結果に繋がったと信じてる。


県大会準決勝。

体育館の空気が重い。

ボールが床を叩く音が、心臓の鼓動と重なる。

「阿玖陽、集中!」

真希音さんの声で我に返る。

私は深呼吸して、ボールを受けた。

パス、ドリブル、シュート。

ネットが揺れた瞬間、歓声が爆発した。

勝った。

全国大会への切符をかけた決勝に進出。

その瞬間、泣くかと思った。でも泣かない。

泣くより、次を考えるタイプだから。

そして――全国大会。

体育館の広さに、まず圧倒された。

観客席の高さ、照明の明るさ、床の光沢。

「ここで試合するんだ」って思った瞬間、手が震えた。

相手チーム?強豪校。名前だけでビビるレベル。

試合開始。

……結果?一勝もできなかった。

点差?聞かないで。

でも、私は後悔してない。

だって、全国大会に立ったんだよ。

弱小だった私たちが、ここまで来たんだよ。

それだけで、誇りだと思ってる。


でもね人はやっぱそうなんだって実感した。

油断大敵。これが一番合うなぁ。

この時はまだ誇りを胸いっぱいに生活していたけど、春一番の大会だったから、これから新入部員が入ってきてまた大変とかは全く考えてなかった。

今考えれば、そこが欠陥と言っても過言では無いのかも。

浮かれてる自分がいたから。

だからあんなことになってしまったのかも。

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