青春病

木村玄

第1話

私を見ていた君がタッチネットをした。

青春の対比も、まだ青春で。

青くないのに、ただ青い夏。

20cmの身長差に還された、10kgの愛情差。


教室にはただ1人。

明かりはついていないが、

光が煩く差している。


廊下には吹部の音が響いている。

メロディを崩すように

書き音が走っている。


校庭には誰もいない。


ポカリスエットのペットボトルが

ゴミ箱に3本。


メモ帳に残した勉強計画は

汗で滲んでいる。


空には描いた鯨が浮いていないけど。


シャー芯を何度も入れ替える。

積み重ねた参考書は

必然のように崩れていくのに。


3時のおやつは自販機で140円。

110円の缶ジュース。


心持たれて眠くなって、

文字が歪んでいる。


外は暑い。

冷房は寒い。

でも、消したら暑い。


電気をつけたが光は青い。

怖くなって、すぐに消す。


西陽は笑顔を呼んでいる。

優しい。

私に優しい。

でも、厳しい。


メモ帳に描いた詩を教室に載せ、

参考書を閉じ、

椅子を机の上にひっくり返す。


滑る廊下を飛び出し、

青春を見下ろす。


上履きを脱ぎはせず、

走り出す。


自転車の前カゴに

ポケットに入っていたゴミを入れ、


青春病を患った君を追いかけて、

描いている。


髪の毛を切る前に。

少しだけ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

青春病 木村玄 @kimumu14

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ