感情を獲得しきっていないからこその素朴さを持つサチの描き方が好きでした。
フランクな場面でも変わらない丁寧な言葉遣い、一つ一つ確かめるようになされる会話。
そういった描写から、彼女が「こういう場合はどう対応するのが適切なのだろう」と頭で考えながらコミュニケーションを取っていることがうかがえます。
ともすると感情が希薄なのかと思ってしまいそうです。
けれど、ある真実を告げるべきか告げないべきかで迷う様子からは、「適切な方を選ぶ」という機械的な迷いだけではない彼女の優しさが伝わってきました。
こちらが正しいと判断を下したならば、迷うことなくその判断にしたがうのが「機械的」な対応ですが、そこに生じる迷いがあるのは、紛れもなく「感情」があるからでしょう。
感情を獲得する過程だからこそ少し淡白にも見えますが、その淡白な中にある感情の芽生えのようなものが、とても優しく繊細に描かれています。
その感情や、感情による行動に正しい解を与えなかったところも好きです。
正しいか正しくないか、適切か適切でないか。
そういったことで、「感情」というものはくくれないのだということが、決して押し付けがましくなく伝わってきたように思いました。
また、読みながら浮かんでくるサチの姿が素敵です。
小さくて礼儀正しい人形が、動いたり、少し困ったり、優しさゆえの後悔で落ち込んだりする姿は可愛らしく、作品に彩も与えていました。
寂しさや悲しさの中にある優しさが心地よい作品です。
魔女によって作られた人形の中でも、感情人形は特別な存在だ。人間の様に振舞うことができ、人間の喜怒哀楽を理解することができる。しかし人間の感情は、それほど単純にはできていない。そのため、感情人形の主人公は、今でも人間の感情の勉強中だ。
主人公は自分を生み出した魔女と森でひっそりと暮らしていた。そこに、ぬいぐるみを抱いた一人の少女が訪ねてくる。どうやら母親を探しに来たようだ。
しかし主人公は、ここでも自分の理解の範囲を超える感情に出会うのだった。
魔法によって生み出された感情人形が、人間の感情を知っていく優しい物語。
果たして、主人公は人間の心を理解できるようになるのか?
是非、御一読ください。