キュートアグレッション

@sy9980

第1話

私たちは買い物の途中で、ショッピングモールの中にあるペットショップに立ち寄った。

「あ、この子カワイイ」

「カワイイよね」

「ねえ、カワイくない?」

「やっぱカワイイ」

ここに来てから、彼女は『カワイイ』とだけしか言っていない気がする。

『カワイイ』と言っている自分に酔っていそうで、そのテンションに引き気味の私だった。

「どうしよう、欲しくなってきちゃった」

しばらくして、彼女がそのペットショップで猫を買ったと聞いたので、久しぶりに友人宅に行ったら、

「うちの子、臆病でものすごく人見知りなの」

と言われた。

自分のテリトリーに見知らぬ人間が突然出現し、怖くてたまらず、どこかに身を隠しているのだろうか。

こちらの様子をじっと伺っているのかもしれないけれど、最後まで全く姿を見せることなく、気配も消していた。

もしかしたら目の中に入れて、出せなくなってしまったのかも知れない。ほかの可能性を考えていると、そら恐ろしくなってきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

キュートアグレッション @sy9980

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

参加中のコンテスト・自主企画