第2話 プロローグ 2
外に放り出された俺。
「帰ってきていいって私たちが言うまで家の敷地に入ったらダメ」
「あ、ついでにお菓子買ってきてー!」
玄関のドア越しに声が聞こえてくる。
「ちょっ!俺は家の中だけかと……って、アイツら鍵をかけやがった!」
どうやら2人は本気で俺に外を歩いてほしいようだが俺にコスプレした格好で歩けるほどの精神力はないので、玄関前に居座る。
すると突然、俺のスマホが鳴り出した。
『お兄ちゃん!なんでまだ玄関にいるの!?はやく外を歩いてきて!』
『嫌なんだけど!俺、コスプレした格好で外を歩きたくないぞ!』
『今日はハロウィンだから問題ないよ!』
『確かにハロウィンだから問題はないが……』
『外を歩いてこないと家に入れないからね!』
そこで電話を切られる。
「はぁ、こうなったら適当に歩くかぁ。お菓子買わないと怒られそうだし」
そんなことを思い、重い腰を上げて街中を歩く。
「ねぇ!ちょっと見てよ!あのキング様、カッコよくない!?」
「ホントね!写真を撮っていいか聞いてみたいけど……カッコ良すぎて声をかけにくい!」
「だよねぇ……仕方ない。今のうちに遠くから見て脳裏に焼き付けておこう!」
しばらく歩くと俺のことをチラチラと見てくる女性たちが現れる。
幸い話しかけられることはないので気にしないように努めているが、俺のことを見てくる女性たちが減る様子はない。
(遠くから俺のことを見て笑ってるのかなぁ。そうだったら泣けてくる)
そんなことを思い、心の中で泣いていると…
「あのぉ、すみません。少しだけお時間よろしいでしょうか?」
1人の女性が声をかけてきた。
「はい、なんでしょうか?」
「私、芸能プロダクション『ヤマザクラ』で働いております
そう言って名刺を渡される。
黒髪をポニーテールに結んだ20代後半くらいの綺麗な女性で、スーツを着ててもわかるくらい大きな胸を持っている。
「芸能プロダクションの方が俺にどのような用件でしょうか?」
「はい。単刀直入に言います。私を助けてください!」
「いきなり何があったんですか!?」
突然の発言に理解できない。
「今、コスプレされた方を中心に『読者モデル』を作成してるのですが、モデルさんが急遽来られなくなったので代役を探してたんです。幸い、今日はハロウィンだったので、街でコスプレをしている方から代役を探すことになりまして」
「なるほど。つまり俺に代役をしてほしいというお願いですね?」
「はい!是非、お願いします!」
神野さんが頭を下げる。
「大変申し訳ないのですが、断らせていただきます」
「な、なぜですか!?」
顔を上げて驚いた表情をする神野さん。
「お、俺なんかよりもカッコいい方が周りに沢山いますので」
「えっ、私はアナタ以上にコスプレの似合う男性に出会ったことないですよ?」
「そ、そこまで言わなくても。あ、お世辞ありがとうございます」
「いや、本心なのですが……」
呆れたような表情で言う神野さん。
「と、とにかく、俺が『読者モデル』に載っても需要がないので断ろうと……」
「待ってください!アナタのような逸材を逃すわけには……あ!私の話を引き受けていただけるなら何でもします!それこそエッチなお願いも多少なら大丈夫です!」
「体を張ってまでお願いしないでください!」
「それくらいアナタには了承していただきたいということです!お願いします!」
再度頭を下げる神野さん。
(こんな目つきがヤバくてヤンキーみたいな俺に体を張ってお願いするってことは、かなり困ってるんだろうなぁ)
ここまでされると断りにくいため、俺は渋々引き受けることにする。
「わかりました。俺でよければ代役を引き受けます。本気で困っているようなので」
「ありがとうございます!」
「ただし掲載するのは1枚だけです!あと、俺のせいで売れなくなっても俺のせいにしないでくださいね!」
「そんな未来は見えませんが……わかりました!撮影場所はコチラになりますので、ついて来てください!」
俺はその返答に満足し、神野さんの後についていった。
少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。 昼寝部 @hirunebu
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