恍惚

haru

第1話

彼はアトリエで絵を描いていた。


アトリエは、多くの作品が制作途中の状態でそのまま放置され、雑然としていた。


彼は、そのどれも完成できずにいた。

未完の作品に囲まれ、今は彼女の肖像画に取り組んでいた。


彼は爪を噛み、彼女を見つめた。

そして、彼女に指示を出した。


「もうちょっと右を向いてくれ。鼻が見づらい」


実際、今の顔の向きは、彼女の鼻筋を際立たせる角度ではなかった。

彼女は黙って従い、少し右を向いた。


彼は立ち上がり、窓のシェードを下ろす。

そして、鼻の修整に取りかかった。


手元にある、いつものパンを噛じる。

デッサンを消すのにも使う味のないパンだ。

噛じった後は、それを見もせずに元の場所に戻す。


筆が止まり、彼は髪を掻き乱した。


「まだまだ完璧じゃない」


彼は筆を手に取らず、その視線だけが彼女と作品の間を行き来していた。


モナ・リザはただ微笑み続けた。

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