第21話 晒し者
健一と美咲の密会写真が晒され、教室は凍り付いた。仮面の男の視線が二人を射抜く中、健一は美咲を庇おうと一歩踏み出した。しかし、その足は震え、言葉は喉の奥に引っかかる。
その時、教室内の一角から小さな悲鳴が上がった。
「キャアアア!」
振り返ると、学年一の美貌で知られる3年生の生徒、佐倉リナが顔を覆って座り込んでいた。彼女の隣に座っていた男子生徒が、震える声で告げた。
「リ、リナと俺、付き合ってません! 本当です!」
しかし、仮面の男は冷酷だった。
「関係ない。昨日、お前たちがカフェで一緒にいるところを目撃されている」
男はスマホを掲げ、リナと男子生徒がカフェで向かい合って座っている写真を見せつけた。その光景は、健一と美咲の写真同様、逃れようのない証拠だった。
究極の選択
「規則に従え。付き合っていると認めれば、それなりの対応をする。抵抗すれば、ペナルティは重くなる」
リナは顔を上げた。その美しい顔には、恐怖と絶望が入り混じっていた。彼女は、この「カップル狩り」の目的が単なる見せしめではないことを、直感的に悟っていた。
「……嫌だ。私は、絶対に捕まらない」
リナは決意に満ちた目でそう呟くと、突然、教室を飛び出した。仮面の男たちが追う声が響く中、リナはただひたすらに走り続けた。
変貌
校舎の裏にある、普段は誰も近づかない古い理科準備室。リナはそこに隠れ、荒い息を整えた。
彼女はポケットから、あるものを取り出した。それは、普段から趣味で使っていた、特殊メイクの道具一式だった。
「これで……これでなら、きっと」
リナは震える手で、鏡に向かって自身の顔に手を当てた。
彼女の決意は固かった。この「カップル狩り」から逃れる唯一の方法は、自分自身を「カップルとは認識されない存在」に変えることだと。
彼女は、自身の魅力を逆手に取り、それを破壊する覚悟を決めたのだ。
巧みな手つきで、リナは自身の美しい顔に変化を加えていく。骨格を強調し、眉を太く、目を小さく見せる。肌の色を変え、影を深くする。そして、最も重要なのは、顔のラインを男性的なものへと変えることだった。
数時間が経過した頃、鏡に映っていたのは、もはや誰もが知る「佐倉リナ」の面影を残さない、一人の見慣れない青年の姿だった。
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