第14話 狂宴の清算
監視塔の展望フロアは、焦げた火薬の臭いと鉄錆の混じった血の香りに支配されていた。
「鎌の継承者」がゆっくりと歩を進めるたびに、高周波振動鎌が「キィィィン」という不気味な産声を上げ、床の血溜まりを霧状に跳ね飛ばす。
「タクヤ、終わりだ。お前のコーナーショットじゃ、この振動の壁は貫けないぜ」
タクヤは柱の影で、最後の一発を装填した銃を握りしめていた。その瞳には、もはやサキへの愛も、生き残る執着すらもなく、ただ「効率的に敵を排除する」という冷徹な計算だけが火花を散らしている。
その時、展望フロアの大型モニターが突如として切り替わり、運営側からの**「最終リザルト」**が全島に放送された。
💀 第14回 渋谷カップル狩り:最終犠牲者リスト
廃墟エリアの3組 遠隔掃射により全滅
元自衛官のリストラ男 ヒ素中毒及び頸部刺殺
毒親育ちの狂信者 放置による出血死
理事長の息子 斬首(高周波鎌による)
サキ(?) 行方不明・死亡推定 ――
🏆 現在の生存者リスト(Final Two)
タクヤ(プレイヤー名:裁定者の影)
状態: 精神汚染度 98%。コーナーショット(残弾1)、ヒ素メス。
鎌の継承者(プレイヤー名:死神の弟)
状態: 興奮状態。大型高周波振動鎌、耐衝撃プロテクター装着。
聖夜の幕引き
「サキを……どこへやった」
タクヤの低い声が響く。
「サキ? ああ、あの女なら、さっき車椅子の銃撃が始まった時に、真っ先に逃げ出したぜ。運営のヘリを呼ぶ『緊急脱出ボタン』がある場所へな。お前を置いて、一人でな!」
継承者の言葉と同時に、鎌が振り下ろされる。
タクヤはコーナーショットを「くの字」に曲げ、自らの背後――窓ガラスに映る「反射」を利用して、継承者の鎌の**基部(モーターユニット)**を狙い定めた。
――パァン!
最後の一発。弾丸は正確に、振動の源である心臓部を砕いた。
火花と共に鎌の振動が止まり、継承者がバランスを崩した瞬間、タクヤはヒ素を塗ったメスを男の喉笛に叩き込んだ。
「……あ、が……」
継承者が倒れる。タクヤは無表情に、男が持っていた「脱出用ビーコン」を奪い取った。
その時、監視塔の外、夜の海から一機のヘリが近づいてくるのが見えた。
救助ではない。運営が「優勝者」を回収するための、血塗られた凱旋車だ。
ヘリの窓から身を乗り出し、冷笑を浮かべてタクヤを見下ろしているのは、逃げ出したはずのサキだった。彼女の手には、運営から与えられた「管理人(ゲームマスター)」の証である金色のタブレットが握られていた。
「お疲れ様、タクヤ。あなたなら、最後まで私を『守って』殺し続けてくれると信じてたわ。最高の配当金よ」
タクヤは血に濡れた手で、もはや弾の切れたコーナーショットを構え、去りゆくヘリを静かに見送った。
島に仕掛けられた自爆装置のタイマーが、残り「00:10」を刻み始める。
渋谷の灰から始まった惨劇は、一人の男を怪物に変え、一人の女を支配者に変えて、夜の海へと沈んでいった。
(無人島篇・完)
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