第12話 決戦前夜

 廃墟と化したリゾートセンターの厨房跡。

 タクヤはコーナーショットの銃口を向けたまま、埃の積まった備蓄倉庫を漁っていた。

​ 彼が探し当てたのは弾丸ではなかった。棚の奥、厳重に封印された古い害虫駆除用の薬剤瓶――そのラベルには、劇物指定を示す赤い文字で**「亜ヒ酸(ヒ素)」**と記されていた。かつて島がリゾート地だった頃、シロアリ駆除のために大量に保管されていたものだ。

​「……これをどうするの、タクヤ」

 サキの声は震えている。タクヤは答えず、無機質な手つきでヒ素の粉末を水に溶かし、コーナーショットの銃口に固定したメスの刃先に、滴るほどに塗りつけた。

​「ハンターたちは強靭だ。急所を外せば反撃される。でも、これなら掠めるだけで終わる」

​ タクヤはさらに、落ちていた数本のペットボトルの飲料水に、巧妙にヒ素を混入させた。そして、それらをわざと「目立つ場所」――弾薬箱が置かれた監視塔へのルート上に、生き残りのカップルが落とした荷物のように偽装して配置した。

 猛毒の収穫

​ 最初にかかったのは、執拗にタクヤを追っていた**「元自衛官のリストラ男」**だった。

 指を撃ち抜かれ、激しい出血と渇きに襲われていた彼は、道端に転がっていた「未開封に見える水」に手を出した。

​「……クソ、生き返る……」

​ 一口飲んだ数分後、彼の世界は暗転した。

 猛烈な腹痛と嘔吐。視神経が侵され、自慢の狙撃眼が濁っていく。

「あ、が……あああ!」

 もがき苦しむ男の前に、コーナーショットを構えたタクヤが音もなく現れた。

​「自衛官なら知ってるだろ。戦場では、拾い食いは厳禁だ」

​ タクヤはコーナーショットを折り曲げ、物陰から男の喉元を、ヒ素を塗ったメスで静かに切り裂いた。男の痙攣が止まるまで、タクヤの表情には一片の動揺もなかった。

 監視塔の悪夢

​ 一方、監視塔の頂上。

**「鎌の継承者」**は、設置されたモニターでその光景を見ていた。

​「ヒ素か。……粋なことをする。兄貴を殺したあの街の連中より、ずっと『ハンター』らしいぜ、お前」

​ 彼は高周波振動鎌を起動させた。空気が震え、キィィィィンという鼓膜を刺すような高音が夜の密林に響き渡る。

 ​タクヤはサキの腕を掴み、重い足取りで監視塔の階段を登り始める。

 彼のポケットには、残りのヒ素を詰めた**「即席の煙幕弾」**。

 吸い込めば肺が焼け、視界を奪う死の霧。

​「サキ、階段の下で待ってて。……終わったら、二人でこの島を出よう」

​ タクヤの言葉に、かつての優しさは微塵もなかった。ただ、ゲームをコンプリートしようとする「プレイヤー」の執着だけが、そこにはあった。

 最終決戦の幕開け

​ 毒霧の戦い: 視界ゼロの監視塔内で、振動鎌の音を頼りにコーナーショットで狙い撃つタクヤ。

​ 裏の裏: 鎌の継承者もまた、ガスマスクを装着し、タクヤがヒ素を使うことを見越していた。

​ サキの反乱: 毒物まで使い始めたタクヤを「怪物」と確信したサキが、階段下で銃を拾い……。

​ 物語のクライマックス、どうなるだろうか!?

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