リア充爆発

イミハ

リア充爆発

クリスマスイブ。

俺は今日も社会に迷惑をかけないよう、部屋から一歩も出なかった。

優良市民だ。

掲示板に「リア充爆発しろ」と書き込む。

これは暴力じゃない。言論だ。日本国憲法が保証している。

エンターキーを押すと、ニュース速報が鳴った。

都内のクリスマスデートスポットで、原因不明の爆発事故。

恋人たちは、最後まで手を離さなかったという。

出来すぎだと思った。

でも、二度目も三度目も一致した。

場所を書き、言葉を書き、エンターキーを押す。

世界は律儀に壊れた。

努力はいらなかった。

面接も履歴書も不要だった。

必要なのは、押す指だけだった。

俺は理解した。

神とは、責任を負わない存在だ。

それでも誰も俺を讃えなかった。

ニュースに名前は出ない。

神なのに、ずっと匿名だった。

最後に考えた。

一番爆発すべきなのは、誰にも必要とされていない場所だ。

俺は書いた。

「ここが爆発しろ」

エンターキーを押した。

その瞬間、急に怖くなった。

死にたくなかった。

誰かに見つけてほしかった。

神なんかじゃなかった。

ただ羨ましくて、妬ましくて、

現実に触れられなかっただけだった。

来年も一人だな、と思った。

それが最後の感情だった。


後日、これらの爆発事故はすべて誤報であったと訂正され、実際には被害も事件も存在しなかったことが発表された。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

リア充爆発 イミハ @imia3341

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る