百合の外で生きるって選択肢もあるんだぜ
百合裁判の結果は、なんと「保留」だった。
「九条透の百合属性は今後の行動により判断する」
――要するに、誰も結論を出せなかった。それからさらに一ヶ月。
学園は相変わらず百合一色。
麗華先輩の溺愛はエスカレートし、
毎朝の抱きつき、昼の膝枕、夜の添い寝はもはや日常。
鏡を見るたび、俺の姿は完全に美少女。
心が少しずつ揺れる瞬間もあった。
(……このまま妹として生きるのも、悪くないかも)
だが、ある夜。屋上。
一人で星を見上げていた俺の前に、真琴先輩が現れた。
「九条透。 お前は結局、百合の庭に居座るつもりか?」
「……俺はただ、普通に生きたいだけです」
「普通?身体は女、心は男。
麗華様の妹として甘やかされて、それで満足か?」
俺は黙った。
真琴は静かにいう。
「百合の間に立つ男は死ねば良い。
私はそう思ってる。
でも……お前は、もう死んでるのかもしれないな」
「……どういう意味ですか?」
「心が男のままなら、お前はすでに『百合の外』に立ってる。
死ぬ必要なんてない。ただ、ここにいる資格がないだけだ」
その言葉が、胸に刺さった。
翌日。
俺は麗華先輩を呼び出した。
百合園の丘の上。満開の白百合が風に揺れる場所。
「透ちゃん、どうしたの?」
俺は深呼吸していった。
「先輩。俺、先輩のこと大好きです。
妹として愛してくれる気持ち、すごく嬉しい」
「私もよ。あなたは私の大事な妹――」
俺は首を振った。
「でも、俺は男として生きる。
先輩の妹じゃなくて、 ただの九条透として」
麗華は目を見開く。それはそうだろう。
俺の体は確かに女だ、こういってはいるが手術を受ける気もない。
俺は男だぞ?女の身体は楽しまなきゃ損だろ。
でも、だからこそ譲っちゃいけない一線はある。
「……え?」
「心が男の俺が、ここに居続けるのは。
先輩にとっても、百合園にとっても、
嘘になると思う」
「でも、私はあなたを――」
「先輩の気持ちはちゃんと受け止める。
でも、俺は百合の庭の外で、男として生きる。
それでいいだろ?」
麗華はしばらく黙っていた。
そして、ふっと微笑んだ。
「……そう。
それでいいわ」
二人は最後に手を繋いだ。指輪は外さなかった。
ただ、意味が変わった。その後。俺は学園を退学したわけじゃない。
ただ麗華先輩の「妹」ではなく、普通の後輩として過ごすことにした。
真琴先輩は、どこか満足げに頷いた。
リアは「先輩の選択、かっこいい!」と泣いた。
最後に、屋上で一人。俺は空を見上げて呟いた。
「百合に挟まる男は死ねば良いって?
だったら俺は最初から死んでるのか、生きてるのか。
答えは簡単だ。 俺はただ、ここにいる。
百合の外で、男として。 それだけだ」
そう俺はこの世界で、『女の身体を持った男』として生きていく。
たとえそれが誰にも理解されない道のりだったとしても。
たとえ百合の庭の外だったとしても、それでいい。
百合に挟まる男は死ねば良い!? 月天下の旅人 @gettenka
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