コミック書評:『報道センターよりお伝えします』(1000夜連続32夜目)

sue1000

『報道センターよりお伝えします』

深夜3時、同じマンションから出勤していく6人の若きアナウンサー。『報道センターよりお伝えします』は、そんな彼らの日常と仕事を軽やかに、時に鋭く切り取った群像劇である。舞台となるのは都内のマンション。偶然にも、公共放送1局+民放キー局5局の朝の顔たちがここに同居することになり、視聴者の知らない“彼らの裏側”が描かれていく。


まず印象的なのは6人それぞれのキャラクターだ。公共放送JHKの誠実な好青年・笹原悠斗は、正統派アナウンサーとしての使命感に燃えるが、その真面目さが時に空回りする。対照的に、華やかな民放トップの橘蓮司は社交的で要領がよく、スポンサー対応に強い。彼の軽やかさは同居人たちの心を救う場面も多い。他にも熱血漢の真田翔馬は、仕事にも友情にも一直線。だが、感情が先走り空気を乱すことも。冷静沈着でニュース解説に定評のある久遠直哉は、理知的すぎるゆえに人間関係では距離を置かれがちだ。そして、アイドルのようなルックスをもつ若手の水島蒼。華やかな笑顔の裏で「アナウンサーは顔だけ」と陰口を叩かれる苦悩に揺れる。最後に、唯一地方局出身で上京したての大谷悠真。不器用で経験不足ながら、純粋な姿勢が周囲を動かす。


本作の魅力は、この6人が織りなすコメディとシリアスの振幅にある。マンションの共有スペースで繰り広げられる“わちゃわちゃ”はまさに青春群像劇(逆ハー的なテイストもある)。お菓子をめぐる小競り合いや、早朝の同時出勤での寝癖騒動など、微笑ましいキュンエピソードが散りばめられている。

一方で、テレビの最前線に立つ者としての葛藤も鋭く描かれている。生放送での言い間違い、SNSでの炎上、視聴率争い。華やかな表舞台の裏にある「声を届けることの責任」もまた、彼らの日常としてリアルに迫ってくる。


なかでも強烈なのは、未成年による殺人事件を報じるエピソードだ。凄惨なニュースをどう伝えるのか、加害者が少年であるがゆえに報道の線引きが難しい。笹原は「社会的責任を果たすべきだ」と声を荒げ、橘は「視聴率と人権のバランス」を冷静に論じ、久遠は「報道倫理の原則」を突きつける。水島は事件現場で涙を見せながらも「自分はただの読み手ではないのか」と苦悩し、大谷は「同世代に近い年齢の子がなぜ」と戸惑う。マンションの共有スペースに集まった6人が、「伝えることの意味」を問い直す場面は充分に読み応えがある。


この構成が本作を単なるイケメン同居コメディに終わらせず、社会的意義のある作品へと押し上げている。殺人事件など重たい題材を、あくまで「報じる立場」にいる彼らの目を通して描くことで、報道と倫理、そして人間らしい感情の狭間にある“揺らぎ”が立ち上がるのだ。


『報道センターよりお伝えします』は、コメディでありながらも、アナウンサーという職業の多面性を浮かび上がらせると同時に、読者に「報道を受け取る自分の姿勢」をも問いかけてくる。


ぜひあなたもこの作品を読んで自分の「推しアナウンサー」を見つけてもらいたい。








というマンガが存在するテイで書評を書いてみた。

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