世界の中心で愛をさけ……
あざみ忍
第1話 世界の中心で愛をさけ……
この俺、
頭が良く、運動神経も抜群。非の打ち所がない、完璧美少女。また男女分け隔てなく、優しく接する聖母様のような人柄は嫌味なところ一つない。おまけに家柄は日本屈指の大企業、高嶺グループのご息女なんだから、参ったもんだ。
つまり、彼女はとにかくモテる。高校に入学してから現在に至るまでのおよそ2年間で儚く散った野郎の数は100を超えるとも言われている。攻略難易度はSS級だ。
だがそれでも、俺は今日の放課後、彼女に告白するつもりだ。既に呼び出しの手紙は出してある。まぁ正直なところ、勝ち目は薄い。だって俺は顔も学力も運動神経だって平々凡々。傍から見れば、彼女とは月とスッポンだろう。でも、だからといって諦めるつもりはなかった。
※※※
そして放課後、ついにその時がやって来た。場所はベタな体育館裏。俺は約束の時間より10分早くやって来て、頭の中で告白のシミュレーションを何度も繰り広げる。ふぅ、準備は万端だ。
「新見君……」
ふいに声を掛けられる。俺は一呼吸おいてから、声がした方へと身体を向けると、そこに立っていたのは、
「えっ、
思わぬクラスメイトだった。
「どうして君が?」
「どうしてって、手紙で呼び出したのは新見君の方でしょ」
「……まっ、まさか!」
嫌な予感がする。高嶺と滝野は同じタ行の名字。
「ねぇ、こんなところに呼んでどうしたの?」
つまり靴箱は隣同士。
「しっ、しまったぁ~」
俺は
「あのさ、俺、本当は高嶺さんに用があったんだよね。だから――」
滝野には悪いが、ここは無かったことにさせてもらう。間違えたことを正直に話すと、滝野は「あぁ、そういうことね」と、どうやら察してくれたらしい。理解が早くて助かるよ。
「でもさ、まど花には婚約者がいるからね」
「えっ、マジ?」
「うん、マジ」
終わった。俺の恋心は告白をする前に玉砕した。世界よ、もうどうにでもなれ。と、次の瞬間――
俺たちのいるところに、突如隕石が降ってきた。
そして人類は皆滅んだ。
世界の中心で愛をさけ…… あざみ忍 @azami_shinobu
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