第4話 「母の愛2」

 児童相談所で、相馬の同期である中川瑞穂はある電話を取った。


 同期と言っても、こちらは40歳手前で転職した「社会人経験組」、あちらは揺るがない信念を持って大学卒業後すぐに児童福祉の門戸を叩いた「新卒組」。同じ3年目だが、なぜそんなにやる気を持てるのか、相馬はいつも不思議だった。


「小学校3年生の娘なんですが、いつも『頭が重い』って、具合悪そうにしていて。入学してから欠席も多くって。学校に行きたくないのかも知れない。原因が少しでも分かればと思って」と、母親からの相談だった。


 中川から電話を引き継いだ相馬は切電後、「なんでオレの担当地区なんだよ」

 面倒くさそうに独り言のように言い、家庭訪問に向かった。


 玄関のベルを押すと、母親がすぐに応対した。にこやかで、緊張は感じられない。背後には少女が小さく立っている。湯呑みを両手に抱え、母の声に合わせて微笑んでいた。


 相馬はまず目で少女の様子を確認する。体は小さく、動きはゆっくり。確かに体調は良さそうには見えない。何より顔色が良くない。


「こんにちは、今日は少しお話をうかがいに来ました」


 母親は微笑んだまま相馬との面談に応じ、少女は「お母さん、体弱くてごめんなさい」と隣で申し訳なさげに声を出す。さらに「いいのよ。迷惑なんてかかってないわ」と気遣いを見せる母親――


 美しい構図だな、と、単純に相馬は思った。この家族の不安を取り除くには、まずは少女の体調不良の解明か。


 調査を進めていく中で、ふと相馬は違和感を覚えた。


「学校に来た日は元気に過ごしてるんですけどねぇ」――


担任の言葉だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る